加湿器は使い方を間違えると加湿器肺炎という病を招く場合があります。加湿器肺炎とは加湿器を使う人であれば誰しも起こり得る病です。免疫を高める目的で使うことが多い加湿器が原因で肺炎にならない為にはどんな対策をすれば良いのでしょうか。菌が繁殖しない為の正しいお手入れ方法や、清潔性に優れたおすすめの加湿器を紹介します。
加湿器肺炎とは
加湿器肺炎とは、その名の通り加湿器が原因となって引き起こす肺炎です。加湿器の内部にカビやレジオネラ菌が繁殖してしまうと、加湿する際に室内の空気中へ放出します。これらを空気と一緒に吸い込むことで肺炎を引き起こしてしまう場合があります。
抵抗力がある人においては、カビやレジオネラ菌を吸い込んだ場合でも特に問題はありません。カビはそれほど病原性が強い訳ではないため、直接肺に炎症を起こすことは少ないです。しかし、高齢者や赤ちゃんのような抵抗力が弱い人は注意が必要です。
加湿器肺炎の症状
加湿器肺炎の症状は、せきやたん、倦怠感や発熱などといった通常の肺炎と同じような症状になります。風邪やインフルエンザの症状とも類似しているので、肺炎と判別することも難しいようです。
ただし、風邪のような症状はあくまで軽症の場合です。重症化してしまうと、呼吸することが苦しくなり、息切れや呼吸困難を招きます。呼吸状態が悪化し、肺の機能が低下してしまうとすぐにでも入院しなければ危険な状態になります。
加湿器肺炎の薬
加湿器肺炎は、過敏性肺臓炎というアレルギー性肺炎の一種になります。そのため、一般的な肺炎の治療薬である抗菌薬(抗生物質)では効果がありません。
軽症の場合は、原因となった加湿器自体の使用を中止することで自然に回復します。対して、重症化してしまった場合には医療機関を受診し、医師の診断を仰ぐことが最善となります。ステロイドなどの抗生物質でアレルギー反応を抑える対応となる場合もあるようです。
●参考記事:横浜鶴見リハビリテーション病院 吉田勝明院長の見解@ウェザーニュース『乾燥するこの時期は加湿器肺炎に注意 原因や対処法は?』
加湿器肺炎を予防するには
では、加湿器肺炎を予防するにはどうしたら良いのでしょうか。私たちができる加湿器肺炎の予防策は大きく分けて3つあります。
最も大切な予防策が、加湿器のお手入れをこまめに正しく行うことです。どんな加湿器でも、定期的に正しくお手入れを行うことでカビやレジオネラ菌の繁殖を抑制することが可能です。加湿器は常に水を扱う製品なので、内部は湿度が高く、カビや雑菌が繁殖しやすい環境となります。特に給水タンクや気化フィルターは頻繁に掃除や洗浄を行わないと、病原菌の温床となりやすいです。
2つ目の予防策は、加湿器肺炎になりにくい加湿器を選ぶことです。加湿器肺炎になりにくい加湿器とは、カビなどの病原菌が繁殖しにくいタイプの加湿器です。お手入れがしやすい加湿器を選ぶことも一つの対策にはなりますが、そもそも菌が繁殖しにくい加湿器を選んでしまえば、仮にお手入れを怠った場合でも肺炎などの炎症を引き起こすリスクが特段に下がります。
3つ目の予防策は、加湿器の給水に使用する水は水道水を使うということです。多くの人にとっては当然の話かもしれませんが、中にはミネラルウォーターや精製水を加湿器に使用してしまう人もします。水道水には塩素が含まれており、雑菌が繁殖しにくい対策がとられています。ミネラルウォーターなどには塩素は含まれていませんので、カビや病原菌が繁殖しやすい環境と化してしまいます。安全に加湿するためには水道水を使用するということも重要なポイントです。
加湿器の正しいお手入れ方法
加湿器肺炎を予防するためには、どのようなお手入れが必要なのでしょうか。特にカビなどの病原菌の繁殖を抑制するために重要なポイントに絞って解説します。
- タンクの水は毎日入れ替える
- タンクは毎日洗浄する
- フィルターやトレイは定期的に洗う
- 水道水を使用する
これらのポイントを守るだけで加湿器肺炎を予防することが十分に可能です。各々の項目について詳細を見ていきます。
タンクの水は毎日入れ替える
水道水に含まれる塩素の除菌効果は1日程度しか持続しませんので、タンクの中の水は毎日入れ替えることが鉄則です。給水検知が出るまで放置しがちですが、長時間放置すればするほどカビや病原菌が繁殖してしまう可能性が高くなります。
加湿器の種類によってはそれほど気にする必要が無い加湿器もありますが、タンク内の汚れや垢などが溜まりにくくなるメリットもあるので毎日入れ替える方が良いでしょう。
タンクは毎日洗浄する
タンクの水を入れ替える際には、タンクの洗浄も併せて行う必要があります。せっかく中の水を入れ替えても、タンク内に汚れや菌が付着していれば入れ替える意味がありません。
毎日スポンジでゴシゴシこする必要はありませんが、きれいな水道水をタンクに入れてシャカシャカと振り洗いをしましょう。数日に1回はスポンジなどでタンク内面をこすり洗いをすれば清潔な状態を保つことができます。
タンクは重曹を使用した洗浄がおすすめです。カビのニオイまできれいに取ることができます。
給水タンクが取り外せるタイプであれば、タンクに水と重曹を入れてシャカシャカと振り洗いをします。取り外せないタイプであれば、水と重曹を入れて1時間程度つけ置きします。最後に重曹水を捨ててタンクをすすぎましょう。家電量販店ノジマが戦場の仕方を分かりやすく紹介されてますので、チェックしてみて下さい。
トレイやフィルターは定期的に洗う
タンク以外のトレイや周辺部品は毎日洗う必要はありませんが、定期的にお掃除する必要があります。また、フィルターがあるタイプの加湿器は気化用フィルターもこまめに洗わなければいけません。
トレイや周辺部品の洗浄
トレイが丸洗いできるタイプであれば、水で流しながらスポンジを使って軽くこすり洗いをします。特に内側の隅に水垢などの汚れが溜まりやすいので、小さめなブラシを使うなど意識して洗うと良いです。丸洗いできないものでも、なるべくキレイな水を含ませたスポンジや布切れを用いて表面の汚れを除去しましょう。
洗浄する頻度としては2週間に1回程度を目安にすると良いです。
トレイの洗浄にも重曹を使った洗浄がおすすめです。ピンク色のカビにも重曹が有効です。
トレイが入る大きさの鍋や器を用意し、水と重曹を入れて重曹水を作ります。このときに少し熱めのお湯にすると尚良いでしょう。この重曹水の中にトレイなどの部品を入れて30分程度つけ置きすることで、カビ汚れに効き目抜群です。
気化用フィルターの洗浄
気化用フィルターは水道水で水洗いした後、やわらかい布で軽く拭き取ります。これは2週間に1回程度で十分清潔に保つことができます。
ただし、1か月に1回はつけ置き洗いが必要です。メーカー指定の洗浄剤や重曹、クエン酸を使ったぬるま湯の中にフィルターを入れてつけ置き洗いをします。つけ置きが終わったら、キレイな水道水で十分にすすぎましょう。すすぐ際の目安は2分以上とのことです。
なお、洗浄の仕方や目安はダイニチ工業の記事を参考にさせて頂いています。詳細が気になる方はダイニチ工業のホームページで確認してみて下さい。
加湿器肺炎になりにくい加湿器とは
加湿器のタイプによっても、カビなどの雑菌を繁殖しやすいものとそうでないものがあります。加湿器肺炎にならないためには、カビ等が繁殖しにくい加湿器を選ぶことが最も簡単な予防策です。
加湿器の主なタイプは以下の4種類です。
超音波式 | スチーム式 | 気化式 | ハイブリッド式 |
---|---|---|---|
超音波振動によって水を霧状にして放出 | ヒーターで水を沸騰させて水蒸気を放出 | 水をフィルターに含ませて風を当てて放出 | 気化式もしくは超音波式にヒーター熱を併用 |
清潔性:× | 清潔性:〇 | 清潔性:△ | 清潔性:△ |
結論から言うと、とにかく加湿器肺炎になりたくないという人はスチーム式を選んでください。最も清潔性が高く、安全に加湿することができます。
〇:スチーム式(加熱式)は、給水した水をヒーターの熱で沸かしてから放出しますので、タンクや水に含まれる雑菌を死滅させます。そのため、キレイな水だけが空気中に出ていきます。原理はヤカンでお湯を沸かすのと同じです。60℃で5分間加熱することでレジオネラ菌は殺菌することができます。(厚生労働省HPより;加湿器などからの感染を防ぐためにはどうしたらよいですか?)
△:気化式・ハイブリッド式の加湿器もカビや雑菌を放出する心配はほとんどありません。水を含ませるフィルターが菌を抑えることで、基本的には清潔な水が放出されます。ただし、フィルターには雑菌が蓄積しますので、お手入れを怠った場合は菌が過剰に繁殖し、風に乗って放出されてしまう可能性もあります。気化式・ハイブリッド式はお手入れが必須です。
×:超音波式の加湿器は水やタンク内に含まれるカビ・雑菌類をそのまま空気中へ放出してしまいます。超音波の振動だけで水を霧化しているので、菌は生きたまま水に含まれます。そのため、超音波式はこまめなお手入れが必須で、少しでも怠ると加湿器肺炎のような炎症を引き起こすリスクが高くなります。
清潔性に優れたおすすめの加湿器
加湿器肺炎にならないためには、スチーム式もしくは気化式、ハイブリッド式の加湿器がおすすめです。それらの中からお手入れのしやすさや清潔性にこだわったおすすめの加湿器を紹介します。
スチーム式の加湿器
象印 EE-DC35・50
スチーム式の代表格である象印の加湿器です。一度沸騰させたお湯を65℃に冷ませてから放出しています。象印ならではのポットのような形をしているため、内部のお手入れがしやすいのが特徴です。ふたを開けるとフッ素加工の広口容器になっていおり、掃除する際に手を入れて拭くのも簡単です。基本的に湯沸かしポットで加湿しているような製品なので、洗浄もしやすく、清潔性に十分優れた加湿器です。
●象印公式HP-製品情報:スチーム式加湿器EE-DC35・50
気化式の加湿器
パナソニック FE-KXU07
パナソニックの気化式加湿器です。ナノイー搭載でお部屋の空気を潤すのと同時に、運転が停止している際は加湿フィルターにナノイーを充満させるフィルター清潔モードを搭載しています。ナノイーがフィルターの水を除菌してくれます。お手入れのしやすさにも気を使っていて、加湿トレーはフラット構造でお掃除がしやすい形状になっています。タンクも広口設計となっているので、手を突っ込んでの掃除も容易です。
●パナソニック公式HP-製品情報:ヒーターレス気化式加湿器 FE-KXU07
ハイブリッド式の加湿器
ダイニチ HD-LX1221
ダイニチの加湿器はお手入れのしやすさと、抗菌仕様に力を入れています。加湿トレイはカンタン取替えトレイカバーというそのまま新しいものに交換するだけのトレイを採用しています。タンクは給水口が広く、ブラシなどを入れても掃除がしやすい設計になっています。更には、トレイや気化フィルター、エアフィルターまでもが抗菌仕様となっています。タンクのキャップには抗菌アタッチメントEXが装着してあり、抗菌成分がタンク内の水へ溶出する仕組みです。
●ダイニチ公式HP-製品情報: ハイブリッド加湿器 LX SERIES
まとめ
風邪やウイルスの抑制目的で使われることが多い加湿器ですが、加湿器によって肺炎を引き起こしてしまっては元も子もありません。
加湿器を使うからには、お手入れが面倒とか言ってる場合ではないです。こまめにお手入れができないのであれば、加湿器の使用は控えるべきと考えます。ヤカンやケトルでお湯を沸かして蒸気で加湿すれば大丈夫です。
加湿器の使用方法を正しく守った上で、乾燥を防ぎましょう。
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