石油ファンヒーターを選ぶ際、ダイニチやコロナ、トヨトミがあるけど、各メーカーの違いって何か分からない。電気代がお得なのはどのメーカーなのか知りたいという人いるのではないでしょうか。
そんな人の為に今回は、石油ファンヒーター主要3社を徹底的に比較し、それぞれの特徴と違いを解説します。
石油ファンヒーターは各メーカーごとに特徴が大きく異なり、何も考えずに購入してしまうと、買ってから「電気代が高い」とか「点火時間が遅い」などと不満が出てきてしまいます。
実際、石油ファンヒーターを選ぶ際にや細かい機能についてはあまり深く考えずに購入している方も多いと思います。ただ、そんな人もメーカーごとの特徴と差異については理解しておくことで後悔することは無いかと思います。
これから石油ファンヒーターの購入や買い替えを検討している方へ、ご自身のライフスタイルに適した商品を選んで頂く為に役立ちます。
石油ファンヒーターの製造メーカー
石油ファンヒーターのメーカーと言われてすぐに思いつくメーカーはありますでしょうか。有名なところで言うと、ダイニチとコロナはよく耳にするかと思います。次いでトヨトミがこの2社の背中を追っており、ダイニチ・コロナ・トヨトミの3社を合わせて、石油ファンヒーターの三大メーカーと言うこともあります。
その他にもアラジンや、ひと昔前だとシャープや三菱、その他の家電メーカーも参入していました。しかし、現在は大手家電メーカーは既に石油ファンヒーター事業から撤退しています。現在のところは、ダイニチ・コロナ・トヨトミの3社で国内シェアのほぼ全てを占めています。
とは言え、実際のところはダイニチとコロナで90%以上を占めていますので、ここ数年間は二大巨頭として確固たるポジションを維持しています。最近のシェアは、およそダイニチが50~55%、コロナが40~45%で互いにシェアを取り合っており、残り数%ほどをトヨトミが占めるという状態です。
家電量販店へ行ってみると、石油ファンヒーター売り場の半数をダイニチが占めており、もう半数をコロナが向かい合うように配置されていることが多いです。外観デザインは並んでいるので比較しやすいかと思います。ただし、仕様上のメーカーごとの特徴については、注意して見ないと判断できないこともあります。また、家電量販店のポップは良い点ばかりを表記していますが、本当に大切なのは悪い点を比較することです。その内容についても記事の中でしっかり説明していきます。
ダイニチ・コロナ・トヨトミの特徴と違いを比較
メーカー毎の総合比較
それでは、ダイニチ・コロナ・トヨトミの3社の石油ファンヒーターについての総評を下記にまとめます。まずは機種を特定せずに、燃焼方式など各々の特徴を比較します。
ダイニチ | コロナ | トヨトミ | |
---|---|---|---|
燃焼方式 | ブンゼン式 | ポンプ噴霧式 | ポット式 |
着火時間 | 早い | 普通 | 遅い |
消費電力 | 高い | 低い | 低い |
ニオイ | 少ない | 少ない | 多い |
騒音 | 普通 | 小さい | 普通 |
耐久性 | 普通 | 普通 | 高い |
保証 | 3年 | 3年 | 3年 |
上記表を見て分かるように、メリットもあればデメリットもあることが分かります。これらをざっくりとメーカー毎の特徴としてまとめると以下になります。
ダイニチ 〇着火時間 ×消費電力
コロナ 〇低消費電力+低騒音 △着火時間
トヨトミ 〇低消費電力+耐久性 ×着火時間
トヨトミはポット式という燃焼方式から、不良灯油への耐久性が高くなっています。エコバーナーと称して昨年からの持ち越し灯油を使用できると保証しているのはトヨトミだけです。ダイニチ・コロナは基本的にフレッシュな灯油の使用を推奨しています。
限りある資源をムダにしない 前シーズンの残り灯油が使える
引用:トヨトミ公式HP
・以下、持ち越し灯油の使用を推奨しないダイニチとコロナ
灯油は昨シーズンから持ち越したものを使うのはNG。酸化で変質して着火不良や途中消火などトラブルの原因になります。使い始めは必ず新しい灯油を用意しましょう。
引用:ダイニチ工業公式HP
昨シーズンから持ち越した灯油や日光が当たる場所、高温の場所で保管した灯油などは変質し、黄色く変色したり、酸っぱい臭いがします。また、水が混入した灯油は灯油と水が分離した状態になります。
引用:コロナ公式HP
変質した灯油や灯油以外の油、水、ゴミなどが混入した灯油を使用すると機器が故障する原因になるので絶対に使用しないでください。
ちなみに、石油ファンヒーターはシリコンを含有しているスプレーや柔軟剤の多用によって故障することは有名です。これは、燃焼状態を制御する炎検知器にシリコンが被膜してしまうと、微電力で検知していた火炎状態が電気が流れなくなり、判別できなくなるためです。ただし、このシリコン耐性はメーカーに限ったものではありませんので、耐久性に大きな差はありません。
各メーカーの最上位モデルで比較
次に、3メーカーのハイエンドモデル(最上位機種)で具体的性能の比較をします。
石油ファンヒーターのラインナップの中では、暖房出力3.0~4.0kW程度の機種が最も需要が高いボリュームゾーンとなります。特に最上位モデルの中で暖房出力で3.6~3.7kWタイプが、各メーカーの製品カタログの顔(最も売り出す機種)となります。
ダイニチは『SGXタイプの3.7kWモデル』、コロナは『WZタイプの3.6kWモデル』、トヨトミは『SLタイプ3.6kWモデル』をラインナップの顔としています。これらのモデルを比較することで、各メーカーとしての実力値が分かる訳です。
数年に一度の頻度で各社ともモデルチェンジを実施したりしますので各性能が変更しますが、今回は2023年最新モデルにて比較します。
メーカー | ダイニチ | コロナ | トヨトミ |
---|---|---|---|
型式 | FW-3722SGX | FH-WZ3623BY | LC-SL36M |
外観 | |||
(最大/最小火力) | 暖房出力3.70kW 0.74kW | 3.60kW 0.59kW | 3.60kW 1.02kW |
着火時間 | 35秒 | 55秒 | 90秒 |
(最大/最小火力時) | 消費電力62W | 129W4W | 9.5W12W | 20W
(最大/最小火力時) | 騒音値25dB | 37dB21dB | 36dB23dB | 37dB
給油タンク容量 | 9.0L | 7.2L | 7.0L |
給油タンクの口 | ワンタッチ汚れんキャップEX※ | よごれま栓 | こぼれま栓 |
質量 | 12.7kg | 11.8kg | 11.0kg |
(高さ×幅×奥行) | 外形寸法445×438×366 | 446×458×338 | 437×435×315 |
気流制御 | 動くフラップ | 足もとあったかルーバー | なし |
消臭制御 | 秒速消臭システムプレミアム | プレミアム消臭”極” | 消臭革命 |
省エネ制御 | ・Wエコプラス ・省エネ(人感)センサー | ・トリプルエコ ・省エネ(人感)センサー | ・快適おまかせ機能 ・人感センサー |
※2021年、ダイニチが上位機種限定で給油タンクに改良型キャップを新しく採用しました。
※2021年、コロナは公式HPにて業界No.1低消費電力の石油ファンヒーターを発売しました。(上位機種のWZシリーズ・VXシリーズに搭載)消費電力が最大火力時でも9.5Wという断トツの低消費電力を実現しました。
暖房出力
最大暖房出力の大きさは、メーカーによる差は特にありません。暖房能力の指標である暖房出力は、あくまで灯油の消費量から算出して定めています。その為、各メーカーとも同じシリーズでも暖房出力が異なるモデルをラインナップしています。
ただし、最小火力についてはメーカーによって意外と大きく異なります。最大火力と最小火力の差が大きいということは、それだけ火力を調節できる幅が広いということですので、その点ではコロナに軍配が上がります。
暖房出力の調節幅の広さで選ぶなら、コロナの石油ファンヒーターがおすすめ!
着火時間
着火時間は燃焼方式に依存し、ダイニチに軍配が上がります。ダイニチが採用している燃焼方式「ブンゼン式」はノズルの中でヒーター熱で灯油を熱するので着火が早いです。2019年まではダイニチの着火時間がコロナやトヨトミを圧倒している状態でした。
ただし、2020年にコロナが着火時間を従来75秒から55秒まで大幅に短縮させました。ダイニチの着火時間は構造上、上限近くまで達しているのに対し、コロナはここ数年で徐々に着火までの時間を短縮化しています。
ダイニチの着火秒数35秒に並ぶまでは先が長そうですが、着火スピード以外に強みが無いダイニチを追いつめていることも事実です。
2020年度モデルはWZ、VXシリーズの3.6kWタイプで、低消費電力はそのままにバーナの最適化により、通常点火時間を従来の約75秒から約55秒に短縮し、点火までにかかる消費電力量を約30%低減(当社比)しました。
引用:コロナ公式HPニュースリリース8/25
着火時間の早さで選ぶなら、ダイニチの石油ファンヒーターがおすすめ!
消費電力
消費電力についてはトヨトミ、コロナに軍配が上がります。トヨトミが採用している燃焼方式「ポット式」は、一度着いてしまえば電力はほとんど掛かりません。また、コロナの「ポンプ噴霧式」もトヨトミと同様の低消費電力を可能にしています。
更に、コロナは2021年の新モデルで、業界No.1の低消費電力石油ファンヒーターをリリースしました。これは送風モーターと燃焼用モーターにDCモーターを採用したことにより、大きな消費電力削減が可能となったとのことです。機種別に見た場合、ポット式のトヨトミを追い抜いて単独トップに躍り出ました。
そんな中、ダイニチだけは消費電力の桁が違います。ダイニチのブンゼン式では、ノズルをヒーター熱で温めて灯油を気化させています。それにより、燃焼中も常に電力をかけ続ける必要があるため、消費電力が非常に高くなります。トヨトミとコロナについては燃焼を開始すれば燃焼熱を利用して灯油を気化させますので少ない電力で済みます。
電気代の安さなら、トヨトミかコロナの石油ファンヒーターがおすすめ!
騒音値
最大火力燃焼時の騒音値は3メーカーともほとんど差はありません。その為、最小火力時の騒音値が一つの指標となります。先にも言いましたが、コロナが最も燃焼火力を弱くまで絞ることができるため、騒音値についても軍配が上がります。
石油ファンヒーターは運転制御によって、室温が設定温度まで上がって安定してしまえば、その後は最小火力まで弱めて燃焼させます。つまり、石油ファンヒーターを使用している時間の多くは最小火力で燃えている状態なので、最小火力時の騒音値が小さいほど、使用時に静かだと感じるのです。
騒音値の小ささで選ぶなら、コロナの石油ファンヒーターがおすすめ!
給油タンク容量
給油タンク(カートリッジタンク)の容量は9Lのダイニチに軍配が上がります。18Lのポリタンクをピッタリ2回で使い切れるのは魅力的です。
コロナとトヨトミはの給油タンクは7L前後です。容量はダイニチより少ないですが、お年寄りや女性の方にはそのくらいのタンクの方が持ちやすくて良いというメリットもあります。
給油タンクの大きさで選ぶなら、ダイニチの石油ファンヒーターがおすすめ!
給油タンクの口
給油タンクの口は、各メーカーとも非常に工夫していてどれも便利な仕様です。
ダイニチはワンタッチで簡単に外れるキャップを機種を限定して採用しています。2021年には、『ワンタッチ汚れんキャップEX』というパカッと開くタイプの給油口を機種限定でリリースしました。従来までのワンタッチ汚れんキャップでは、外したキャップをどこかに置いておく必要がありましたが、進化したワンタッチ汚れんキャップEXは、コロナのよごれま栓のようにキャップが保持される構造となりました。
コロナでは全機種によごれま栓というワンタッチでふたがパカっと開く機構を採用しています。レバーを引くだけでふたが開きます。また、高級機種限定で持ち運び用のとって『キャリングとって』が付いたタンクを採用しています。
トヨトミのキャップはシンプルに手回し式ですが、こぼれま栓というものがタンク内部に搭載されており、給油中にタンクを誤って倒してしまっても、中身の灯油がこぼれにくいという面白い機構を採用しています。
給油タンクの口については、どのメーカーも使いやすくて便利!
その他の特徴
- 本体サイズはトヨトミが一回り小さく、質量も若干軽いです。
- ダイニチ・コロナは吹き出し口に動く風向板(フラップ・ルーバー)を搭載しています。それにより温風の吹き出し方向を変化させることができるため、温度ムラを低減させます。
- 消臭制御や省エネ制御は各社とも独自の機能を備えていますので優劣は付け難いです。(臭いというは定量的な比較が難しく、指標となる要素も定まっていません。ハイドロカーボン量が指標に使われることがありますが、臭いの一成分を示しているだけですので実際に嗅いだ臭いとは相関が取れません)
今回比較したモデルの価格や詳細
ダイニチ SGXタイプ
コロナ WZタイプ
トヨトミ SLタイプ
ダイニチ・コロナ・トヨトミの特徴とおすすめモデル紹介
ダイニチの石油ファンヒーターについて
ダイニチの石油ファンヒーターについて、特徴から選び方まで別の記事にまとめています。また、ダイニチの石油ファンヒーターの中でも、家電マニアとしておすすめするモデルも紹介。ぜひチェックしてみて下さい。
コロナの石油ファンヒーターについて
コロナの石油ファンヒーターの特徴なども詳しくまとめています。選び方や、コロナの中でも一番おすすめする石油ファンヒーターはどれなのかも紹介しています。気になる方、モデル選びで迷っている方は一度チェックしてみてください。
トヨトミの石油ファンヒーターについて
ダイニチとコロナに比べて知名度は低いトヨトミですが、トヨトミにしかないメリットやオリジナルの石油ファンヒーターもあります。その特徴や選び方もまとめています。特に人とは違う石油ファンヒーターが欲しい人はぜひチェックしてみてください。
結局はどのメーカーがおすすめなのか
どのメーカーも違ってどれも良い!
着火が早い方が良い人はダイニチ
ランニングコストを考えるのであればコロナかトヨトミ
最もバランスが取れたファンヒーターはコロナ
ダイニチを選ぶ人の多くが着火時間の早さを魅力に感じて選んでいます。それだけ着火までの時間が早いことはユーザーに求められている性能なのだと思います。
対して、着火時間のわずかな差よりも長期的コストを考慮したいと考える人はコロナかトヨトミを選択すべきです。シーズンごとの電気代を比較すると差は歴然です。
また、着火時間や消費電力、その他機能などトータル的に評価するとコロナが一番バランスが取れていると言えるでしょう。
ダイニチとコロナのどちらが良いのか
トータルバランスの取れたコロナの石油ファンヒーターがおすすめです。コロナの石油ファンヒーターには、ダイニチの消費電力の高さや、トヨトミの着火時間の遅さのような大きなデメリットがありません。
特に、消費電力の低さが最大のおすすめポイント。昨今のように電気代が高騰する中、消費電力の低さはモデル選びをする上でかなり大きなポイントになります。石油ファンヒーターで唯一、DCモーターを採用することで業界No.1の低消費電力を実現したことが今後も需要の高まりに繋がると思います。
また、石油ファンヒーターはリビングなどの居住空間で使用する家電であり、どうしても気になるのが運転音の大きさです。ダイニチは燃焼方式の都合から、バーナーのような燃焼音が大きく聴こえます。対して、コロナの石油ファンヒーターは火力調節幅が広くて弱火力をとても小さくできるので、最小火力時の運転音はほぼ無音に近いレベルです。
消費電力の低さ、運転音の小ささを筆頭に弱点が少ないことから、ダイニチよりもコロナの石油ファンヒーターをおすすめします。
その他にも
こんなタイプの人はこのメーカーがおすすめというのを下記に書きだしましたので、参考までにチェックしてみてください。
・電気代を気にしない人 → ダイニチ
・着火が早ければいい人 → ダイニチ
・電気代を抑えたい人 → トヨトミ・コロナ
・長期的費用を考えられる人 → コロナ・トヨトミ
・持ち越し灯油を使いたい人 → トヨトミ
・音が静かな方がいい → コロナ
・臭いが気になる人 → ダイニチ・コロナ
おすすめのメーカー以外にも、石油ファンヒーターについては下記の記事でまとめています。石油ファンヒーターの購入を検討している人はチェックしてみてください。
石油ファンヒーターのメーカー比較のまとめ
今回のように冷静に比較すると疑問を抱くのが、なぜダイニチが現状シェアNo.1なのかということです。性能・機能・使い勝手を見ると、トータル的にコロナやトヨトミの方が良いのではと思う人も少なくないはずです。
しかし、石油ファンヒーターを購入する際に事細かに性能を比較する人がどれだけいるかと言われたら少ないかもしれません。特に細かいことは考えていない人にとって、着火時間が早い・部屋がすぐ暖まる・シェアNo1と言われたらダイニチを選んでしまうのも分かります。
ですが、この記事を読まれた方はダイニチがすべて良いのかというと全く違うということが既にお分かりだと思います。3社ともそれぞれ良い面があって、弱点となる点もあります。だからこそ、各社の弱点をまず比較した中で、ご自身の考えに合う石油ファンヒーターを選んでもらえれば良いと思います。