石油ファンヒーターのメーカーといえばダイニチ(dainichi)やコロナ(CORONA)、トヨトミ(toyotomi)など暖房機器をメインに扱う会社が有名です。しかし、実際に石油ファンヒーターを選ぶ際にはメーカーや細かい機能についてはあまり考えずに購入している方も多いと思います。ですが、実は石油ファンヒーターはメーカーごとに特徴が大きく異なります。何も考えずに購入してしまうと、もしかしたら使用している中で損をしてしまっている場合もあります。これから石油ファンヒーターを購入・買い替えを検討している方へご自身のライフスタイルに適したものを選んで頂けるよう役立つ記事になると幸いです。
この記事のもくじ
1.石油ファンヒーターのメーカー
石油ファンヒーターのメーカーと言われてパッと出てくるメーカーはありますでしょうか。有名なところで言うと、『ダイニチ』と『コロナ』はよく耳にするかと思います。次いで『トヨトミ』がこの2社の背中を追っており、これら3社を合わせて石油ファンヒーターの三大メーカーと言わることもあります。その他にもアラジンや、ひと昔前だとシャープや三菱、その他家電メーカーも参入していました。大手家電メーカーは既に石油ファンヒーターから撤退しています。
現在のところはダイニチ・コロナ・トヨトミの3社で国内シェアのほぼ全てを占めています。
と言いましたが、実際のところはダイニチとコロナで90%を占めていますので、ここ数年は2トップとして確固たるポジションを維持しています。最近のシェア率は、ダイニチが50~60%、コロナが30~40%で互いにシェアを取り合っており、残り10%前後がトヨトミという状態です。
家電量販店へ行ってみても売り場の半数をダイニチが占めており、もう半数のコロナがその合い向かいに並ぶように配置されています。
まさににらみ合っているかのように並んでいますので、外観の良し悪しでの比較はしやすいですけどね。ただ、肝心のメーカーごとの特徴については注意して見てみないと判断できないこともあります。
また、家電量販店のポップは良い点ばかりを表記していますが、本当に大切なのは悪い点を比較することです。その内容についても記事の中で説明していきます。
2.ダイニチ・コロナ・トヨトミの違いと比較
メーカー総評比較
まずはダイニチ・コロナ・トヨトミの3社について、機種を特定せずに石油ファンヒーターの総評として比較します。
メーカー | ダイニチ | コロナ | トヨトミ |
燃焼方式 | ブンゼン式 | ポンプ噴霧式 | ポット式 |
着火時間 | ◎ | 〇 | △ |
消費電力 | ✕ | ◎ | ◎ |
ニオイ | 〇 | 〇 | ✕ |
騒音 | △ | 〇 | △ |
耐久性 | △ | △ | 〇 |
保証 | 3年 | 3年 | 3年 |
まとめると、
ダイニチ 〇着火時間 ×消費電力
コロナ 〇消費電力+低騒音 ×着火時間
トヨトミ 〇消費電力+耐久性 ×着火時間
トヨトミはポット式という燃焼方式から、不良灯油への耐久性が高くなっています。エコバーナーと称して昨年からの持ち越し灯油を使用できると保証しているのはトヨトミだけです。ダイニチ・コロナは基本的にフレッシュな灯油の使用を推奨しています。
限りある資源をムダにしない 前シーズンの残り灯油が使える
引用:トヨトミ公式HP
▽以下、持ち越し灯油の使用を推奨しないダイニチとコロナ
灯油は昨シーズンから持ち越したものを使うのはNG。酸化で変質して着火不良や途中消火などトラブルの原因になります。使い始めは必ず新しい灯油を用意しましょう。
引用:ダイニチ工業公式HP
昨シーズンから持ち越した灯油や日光が当たる場所、高温の場所で保管した灯油などは変質し、黄色く変色したり、酸っぱい臭いがします。また、水が混入した灯油は灯油と水が分離した状態になります。
変質した灯油や灯油以外の油、水、ゴミなどが混入した灯油を使用すると機器が故障する原因になるので絶対に使用しないでください。引用:コロナ公式HP
※ちなみに、石油ファンヒーターはシリコンを含有しているスプレーや柔軟剤の多用によって故障することは聞いたことがあると思います。これは、燃焼状態を制御する炎検知器にシリコンが被膜してしまうと、微電力で検知していた火炎状態が電気が流れなくなり、判別できなくなるためです。ただし、このシリコン耐性はメーカーに限ったものではありませんので、耐久性に大きな差はありません。
モデルで比較
次に、各社のハイエンドモデル(最上位機種)で具体的性能の比較をします。
石油ファンヒーターのラインナップの中で、ハイエンドモデルの中でも暖房出力で3.6~3.7kWタイプが各社の販売カタログの顔(最も売り出す機種)となります。
ダイニチは『SGXタイプの3.7kW』、コロナは『WZタイプの3.6kW』、トヨトミは『SLタイプ3.6kW』を顔としています。これらのモデルを比較することでメーカーとしての実力値が分かる訳です。
数年に一度、各社とも大幅にモデルチェンジを行い性能が変更しますが、今回は2019年モデルにて比較します。
型式(2019年モデル) | FW-3719SGX | FH-WZ3619BY | LC-SL36H |
外観 | ![]() |
![]() |
![]() |
暖房出力 (最大/最小火力) |
3.70kW 0.74kW |
3.60kW 0.59kW |
3.60kW 1.02kW |
着火時間 | 35秒 | 75秒※ | 90秒 |
消費電力 (最大/最小火力時) |
129W 62W |
22W 11W |
20W 12W |
騒音値 (最大/最小火力時) |
37dB 25dB |
36dB 21dB |
37dB 23dB |
給油タンク容量 | 9.0L | 7.2L | 7.0L |
給油タンクの口 | ワンタッチ汚れんキャップ | よごれま栓 | こぼれま栓 |
質量 | 12.6kg | 12.3kg | 11.0kg |
外形寸法 (高さ×幅×奥行) |
445×438×366 | 446×458×338 | 437×435×315 |
気流制御 | 動くフラップ | 可動ルーバー | なし |
消臭制御 | 秒速消臭システムプレミアム | プレミアム消臭”極” | 消臭革命 |
省エネ制御 | ・Wエコプラス ・省エネ(人感)センサー |
・トリプルエコ ・省エネ(人感)センサー |
・快適おまかせ機能 ・人感センサー |
※2020年8月25日、コロナ公式HPにて点火時間を従来の75秒から55秒に短縮化したモデルの発売がリリースされました。
以下、項目ごとに考察していきます。
暖房出力
最大火力時の出力の大きさはその他性能への影響はありません。あくまで灯油の消費量を暖房出力と定めているからです。
ただし、最大火力と最小火力の差が大きいということは、それだけ火力を調節できる幅が広いということですので、そういう意味ではコロナに軍配が上がります。
着火時間
燃焼方式に依存しますが、ダイニチの採用しているブンゼン式に軍配が上がります。2019年のモデル時点では、コロナ・トヨトミを圧倒している状態です。ダイニチのブンゼン式はノズルの中でヒーター熱で灯油を熱しますので着火が早いです。ただし、ダイニチの着火時間は構造上、おそらく上限近くまで達しているのに対し、コロナ・トヨトミはここ数年で着々と時間を短縮化しています。ダイニチの35秒に並ぶまでは先が長そうですが、追いつめていることも事実です。
※2020年8月25日、コロナ公式HPにて点火時間を従来の75秒から55秒に短縮化したモデルの発売がリリースされました。本当に短縮化を実現してきたコロナに驚いています。
2020年度モデルはWZ、VXシリーズの3.6kWタイプで、低消費電力はそのままにバーナの最適化により、通常点火時間を従来の約75秒から約55秒に短縮し、点火までにかかる消費電力量を約30%低減(当社比)しました。
消費電力
ポット式のトヨトミに軍配が上がります。コロナもトヨトミとわずか2W程度の差なのでほぼ並んでいますが、ダイニチだけは桁が違います。ダイニチのブンゼン式ではノズルをヒーター熱で温めて灯油を気化させていますので、燃焼中も常に電力をかけ続ける必要があるため、消費電力が非常に高くなります。トヨトミとコロナについては燃焼を開始すれば燃焼熱を利用して灯油を気化させますので省電力で済みます。
※最小火力時の消費電力は各社とも出力がバラバラですので一概に比較が難しいので、最大火力時の消費電力が定格値になります。
騒音値
最大火力燃焼時は3社ともほとんど差はありません。最小火力時の騒音値が一つの指標となります。先にも言いましたが、コロナが最も燃焼火力を弱くまで絞ることができるため、騒音値についても軍配が上がります。制御上、室温が設定値まで安定してしまえば、基本は最小火力まで落として燃焼させます。つまり、石油ファンヒーターを使用している時間の多くは最小火力で燃えている最中ですので、その時の騒音値が小さいほどユーザーとしても低騒音に感じるのです。
給油タンク容量
給油タンク(カートリッジタンク)の容量は9Lのダイニチに軍配が上がります。18Lのポリタンクをピッタリ2回で使い切れるのは魅力的です。コロナ・トヨトミは7L前後ですが、お年寄りや女性の方にはそのくらいのタンクの方が持ちやすくて良い面もあります。
給油タンクの口
これは3社とも工夫されています。ダイニチはワンタッチで簡単に外れるキャップを機種を限定して採用しています。コロナは全機種によごれま栓というワンタッチでふたがパカっと開く機構を採用しています。トヨトミのキャップはシンプルに手回し式ですが、こぼれま栓というものがタンク内部に搭載されており、給油中にタンクを誤って倒しても灯油がこぼれない機構を採用しています。
その他
- 本体サイズはトヨトミが一回り小さく、質量も若干軽いです。
- ダイニチ・コロナは吹き出し口に動く風向板(フラップ・ルーバー)を搭載しています。それにより温風の吹き出し方向を変化させることができるため、温度ムラを低減させます。
- 消臭制御や省エネ制御は各社とも独自の機能を備えていますので優劣は付け難いです。(臭いというは定量的な比較が難しく、指標となる要素も定まっていません。ハイドロカーボン量が指標に使われることがありますが、臭いの一成分を示しているだけですので実際に嗅いだ臭いとは相関が取れません)
上記3モデルの価格・詳細はこちら
・ダイニチ SGXタイプ
・コロナ WZタイプ
・トヨトミ SLタイプ
ダイニチ・コロナ・トヨトミの特徴とおすすめモデル紹介
3社の石油ファンヒーターの特徴と、おすすめモデルを別の記事にまとめていますのでチェックしてみてください。
ダイニチの石油ファンヒーターについて
コロナの石油ファンヒーターについて
トヨトミの石油ファンヒーターについて
3.どこが一番おすすめなのか
◎結論
・着火が早い方が良い人はダイニチ
・ランニングコストを考えるのであればコロナかトヨトミ
ダイニチを選ぶ人の多くが着火時間の早さを魅力に感じて選んでおりますので、それだけ着火までの時間が早いことは求められている性能なのだと思います。
対して、着火時間のわずかな差よりも長期的コストを考慮したいと考える人はコロナかトヨトミを選択すべきです。
その他にも
こんな人はこのメーカーというのを書きだしましたので参考までにチェックしてみてください。
・電気代を気にしない人 → ダイニチ
・着火が早ければいい人 → ダイニチ
・電気代を抑えたい人 → トヨトミ・コロナ
・長期的費用を考えられる人 → コロナ・トヨトミ
・持ち越し灯油を使いたい人 → トヨトミ
・音が静かな方がいい → コロナ
・バランスが取れたもの → コロナ
・臭いが気になる人 → ダイニチ・コロナ
4.まとめ
これらの内容を見てお気づきの方もいるかもしれません。なぜダイニチが現状シェアNo.1なのか。性能・機能・使い勝手を見ると、トータル的にコロナやトヨトミの方が良いじゃんと思う人も少なくないはずです。
それはその通りなのです。しかし、石油ファンヒーターを購入する際に事細かに性能を比較する人がどれだけいるかと言われたら少ないかもしれません。
特に細かいことは考えていない人にとって、着火時間が早い・部屋がすぐ暖まる・シェアNo1と言われたらダイニチを選んでしまうでしょう。
ですが、この記事を読まれた方はダイニチがすべて良いのかというと全く違うということが既にお分かりだと思います。
3社ともそれぞれ良い面があって、弱点となる点もあります。だからこそ、各社の弱点をまず比較した中で、ご自身の考えに合う石油ファンヒーターを選んでもらえれば良いと思います。
家電量販店の店員も一人の人間です。売りやすいモデル・メーカーをプッシュするでしょう。
そもそも石油ファンヒーターを詳しく理解していない店員もいます。
いわゆる情報弱者になってはダメです。自分で情報を収集して比較し、適したモデルはどれなのか考えないと知らないうちに後悔をします。
今回は石油ファンヒーターについてまとめましたが、他の家電製品についても別の記事にまとめております。ぜひ参考までに読んでいただければと思います。