「石油ストーブの燃費に違いがあるのか」、「燃費を上げる方法を教えて欲しい」といったような声を耳にします。
ネットで調べても、サイトによっては燃費と燃料消費量を混合していたりして、何が正解なのかが分からないという人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、石油ストーブにおける燃費と、燃費を上げる為の方法を解説します。
さらに、長年使用していて燃費や暖房感が悪くなってきたと感じる場合の原因と対処方法についても紹介。
最後には、燃費が気になる人におすすめ石油ストーブも紹介するので、石油ストーブの購入やモデル選びで悩んでいる方の参考になればと思います。
石油ストーブの燃費とは
石油ストーブの燃費とは、「灯油1Lあたりの燃焼時間」のことを指します。
燃費は、燃料消費量から求められる『燃料消費率』のことなので、燃料消費量とは異なります。
石油ストーブの燃焼効率は100%です。これは、灯油を燃やした量だけ全て熱エネルギーに変わることを意味します。
つまり、石油ストーブの燃費は、暖房出力の大きさで燃焼時間が決まります。
石油ストーブの暖房出力は燃焼時間に負の比例関係になるので、燃焼時間を長くしたい場合は暖かさを犠牲にするしかないということです。
暖房出力は燃料消費量と同じ
石油ストーブの暖房出力[kw]は、燃料消費量[L/h]と同じです。1時間当たりに消費した灯油量から、発熱量などを換算して求められます。
つまり、単位が異なるので数値も変わりますが、大小関係の比較にはどちらも同じです。
その為、メーカーによっては暖房出力と燃料消費量の両方を記載しています。
販促カタログや取扱説明書など製品仕様項目には必ず記載されていますのでチェックしてみて下さい。
燃焼継続時間は油タンクの容量も関係
石油ストーブの『燃焼焼継続時間』とは、油タンクに満量の灯油を入れた場合に燃焼が継続できる時間のことです。
つまり、[燃費]×[油タンクの容量]で燃焼継続時間が求められます。
よって、燃焼継続時間が長い方が良いという人は、燃料消費量が少なく、かつ油タンク容量が多いものを選ぶべきということになります。
石油ストーブの燃費と燃焼継続時間の求め方
石油ストーブの燃費および燃焼継続時間を計算する方法を解説します。
- 燃費・・・1L当たりの燃焼継続時間
- 燃焼継続時間・・・燃費と油タンク容量で決まる燃焼可能時間
燃費の求め方
燃費の算出には燃料消費量を使います。製品の仕様に記載されている燃料消費量「○○ L/h」を確認します。「L/h」は、一時間当たりの灯油の消費量を表します。
よって、燃費(1L当たりの燃焼継続時間)は、以下の計算式で算出できます。
燃費 = 1 / 燃料消費量 [h/L]
例)燃料消費量0.350L/hの場合
燃費 = 1 / 0.350 ≒ 2.857 [h/L]
燃焼継続時間の求め方
次に、燃焼継続時間の求め方です。燃焼継続時間は油タンクの容量にもよるので、以下の計算で求められます。
燃焼継続時間 = 燃費×油タンクの容量
例)燃費2.857[h/L]、油タンク5[L]の場合
燃焼継続時間 = 2.857h/L × 5.0L ≒ 14.29 [時間]
石油ストーブの燃費にメーカーの差は無い
既に解説した通り、石油ストーブは灯油を消費した分だけが熱に変わります。
よって、暖房出力が同じであれば燃料消費量も同じであり、メーカーごとによる燃費の差はありません。コロナもトヨトミもアラジンも同じです。
メーカーごとによる違いは、暖房出力の大きさ自体が全く一緒ではないことです。
燃費は暖房出力が同じであれば同等ですが、そもそも暖房出力(定格出力)がメーカーごとで異なり、出力の数値が全く同じというケースは少ないです。
例として、コロナとトヨトミの反射形石油ストーブの出力ラインナップを下記に示します。
暖房出力 | コロナ | トヨトミ |
---|---|---|
3.0kW以上 | 3.65 kW | 3.60 kW |
3.47 kW | 3.01 kW | |
3.0~2.5kW | 2.87 kW | 2.87 kW |
2.83 kW | 2.75 kW | |
2.5kW以下 | 2.42 kW | 2.35 kW |
2.24 kW | 2.25 kW |
つまり、メーカー間で比較するのであれば、燃費を比較するよりも、燃料消費量を比較するという方が正しいことになります。
コロナとトヨトミの石油ストーブの違いについては、別記事でまとめています。気になる人はチェックしてみてください。
石油ストーブの燃費が悪い場合の原因
石油ストーブを使用している中で、燃費が悪いと感じることがあるかもしれません。(ここで言う燃費というのは「灯油1Lで燃焼が何時間継続するか」ということです)
石油ストーブは暖房出力が高くなれば燃費が落ちますので、もし「燃費が悪くなった」=「灯油の消費が早くなった」と感じるのであれば、暖房出力が高くなったということになります。
「使っていて暖房出力が高くなることなんてあるのか」と疑問に思う人もいるかと思います。でも実は、高くなる可能性はあります。
石油ストーブの燃焼は、簡単に言えばアルコールランプで自然に燃えています。その為、石油ストーブの燃料消費量は、気圧に大きく影響を受けます。気圧が高いと火が伸びやすく、燃料消費量つまり暖房出力が高くなります。
よって、もし普段より灯油の消費が早い、燃費が悪いと感じるのであれば、気圧を疑ってみてください。その場合は火の伸び方など見た目でも分かるかもしれません。
普段よりも明らかに火が伸びている場合は、しん上下ハンドルでほんの少しだけしんを下げても問題ありません。普段と同じくらいの燃焼状態になるように調節するのであれば、燃焼排ガスの悪化などもありません。
石油ストーブの燃費を上げる方法
石油ストーブの燃費を上げるには、「暖房出力を弱くする」=「燃料消費量を減らす」しか方法はありません。
実際にはどうすれば良いのか。
それは、「暖房出力の低い機種を選ぶ」もしくは「暖房出力を調節できるタイプの石油ストーブを購入する」しかありません。
暖房出力の低い機種を選ぶ
燃料消費量を減らしたいのであれば、そもそも暖房出力が低い機種を選ぶのが最も簡単な方法。
具体的に言うと、暖房出力が低い石油ストーブの目安は、2.0kW前後のもの。
また、石油ストーブには対流形タイプと反射形タイプがありますが、基本的には反射形タイプの方が出力が低い機種が多いです。
対流形は部屋全体を対流して暖めることから、5.0kw程度の高出力のものもあります。対して、反射形では出力が高い機種でも3.5~3.7kW程度。
よって、暖房出力が低い石油ストーブを探すのであれば反射形タイプから選ぶことをおすすめします。
対流形の石油ストーブと反射形の石油ストーブの違いについては、別の記事で比較しながらまとめています。気になる人はチェックしてみてください。
暖房出力を調節できるタイプの石油ストーブを購入する
燃費も気になるけど普段はしっかり暖めたいという人におすすめなのが、暖房出力を調節できるタイプの石油ストーブ。
石油ストーブの中には、暖房出力を調節できない機種も多く、知らずに購入して後悔してしまうケースも少なくありません。
暖房出力を調節できるタイプであれば、部屋をしっかり暖房したいときは最大出力で燃焼させ、灯油の消費を気にするときは出力を弱めて運転することができます。
状況によって使い分けたいという人には出力調節がある石油ストーブがおすすめです。
出力調節できる石油ストーブでも調節できる範囲は規定されています。範囲を超えての使用は燃焼バランスが崩れるのでNG。
暖房出力を下げたい時の注意!
注意したいのが、出力調節範囲が無い機種でも、しん上下ハンドルを回してしんを下げることで物理的には火力を弱くすることができてしまうこと。
しかし、これは絶対にやってはいけません。
理由は、燃焼バランスが崩れて燃焼排ガスが悪くなるからです。この状態では製品規格をクリアできるような数値ではないことから、メーカー側もあえて調節範囲を設定していないのです。
出力調節ができる石油ストーブでは、しん上下ハンドルの回りに調節範囲が明記されています。「ここからここまでの範囲であれば安全に使用できます」という意味の表示です。その範囲を超えての使用は全て自己責任となりますので注意が必要です。
出力調節ができない石油ストーブで火力を弱めて使用するのはNG。燃焼排ガスの悪化など悪影響が生じます。
石油ストーブの暖房感が悪いと感じた場合
燃費ではないけど、石油ストーブ自体の暖房能力が落ちてきたと感じる場合もあります。その場合、以下の点が考えられます。
- しんの上にタールが付着している
- 空気取り入れ口にホコリが詰まっている
- 不良灯油を使用している
- しんの寿命
しんの上にタールが付着していると燃焼効率が低下して本来の暖房能力が発揮されません。
しんの上にタールが付着しているかどうかは、しんの先端に黒い塊が大量に付着していないかどうかで確認できます。仮にタールが付着していなくても、しんが焼けて多少は黒くなったりします。タールが大量に付着している場合は、『しんのから焼き」を行うことでタールを除去することができます。
しんのから焼きのしかたについては、コロナの公式HPに記載されているので参考にしてください。取扱説明書にも記載されています。
空気取り入れ口にホコリが堆積している場合も燃焼効率が低下して暖房感が落ちる場合があります。
器具の空気取り入れ口は、筐体と置台との間にある隙間です。ここにホコリなどのゴミが詰まっていると必要な酸素が上手く供給できず、暖房能力が損なわれることに繋がります。燃焼排ガスの悪化にも影響があるので、定期的に掃除することをおすすめします。
不良灯油の使用も燃焼効率の低下を招きます。不良灯油というのは、1年以上前の古い灯油だったり、軽油や水が混ざったような灯油のことです。不良灯油はタールの付着や器具の故障に繋がりかねないので注意が必要。
また、しんにも寿命があります。長年使っていると、しんも少しずつ劣化していきます。しんが劣化すると灯油を吸い上げる速度が落ちたり、気化効率が低下することになります。その場合は、しんを交換するか、器具ごと買い替えるしかありません。
石油ファンヒーターの燃費は少し違う
石油ストーブは室温に関係なく同じ出力で燃焼し続けますが、石油ファンヒーターの場合は自動で出力を上げたり下げたり制御します。
つまり、石油ファンヒーターの燃費は石油ストーブとは異なり、その機種の制御や環境、運転モードによって燃料消費量が大きく前後するので必ずしも「暖房出力が同じ=燃費も同じ」ではないです。
ただし、暖房出力が同じで、その出力一定で燃焼するのであれば、燃費も同じになります。
石油ファンヒーターは石油ストーブとは違って火力調節範囲がとても広いです。さらに設定温度に達したら出力を下げて、無駄な灯油の消費を抑制することができます。
よって、石油ストーブと石油ファンヒーターを燃費および効率で比較すれば、石油ファンヒーターの方が圧勝です。
燃費以外にも、石油ストーブと石油ファンヒーターの違いはあります。それらの違いについては別の記事でまとめていますのでチェックしてみてください。
1時間当たりにかかる灯油代
補足ですが、1時間当たりにかかる灯油代の計算方法も紹介します。考え方によっては、1時間当たりにかかる灯油の費用を燃費とする場合も少なからずあります。
1時間当たりにかかる灯油代は、燃焼量消費量[L/h]×灯油の単価 で算出します。
結局、暖房出力≒燃料消費量に灯油単価を掛けるだけなので、1時間当たりの灯油代を燃費というのは少し違うと個人的に思います。
燃費が気になる人におすすめの石油ストーブ
燃費が気になる人におすすめ、出力の調節ができる石油ストーブを紹介します。
これらの石油ストーブであれば、必要な時にはフルパワーで暖房し、燃費が気になる時は弱い火力で燃焼させることができます。
トヨトミ HRC-W36N
暖房出力 | 3.60kW |
燃料消費量 | 0.350L/h |
燃焼継続時間 | 約11.4時間 |
油タンク容量 | 4.0L |
出力調節範囲 | 3.60~2.16kW |
トヨトミの最上位機種のひとつ。反射形石油ストーブの暖房出力としては業界トップクラスです。定格暖房出力は3.60kWですが、出力の調節範囲が広く2.16kWまで弱めることが可能。寒い時は最大出力で、燃費が気になるときは弱めて燃焼させることができます。ただし、油タンクの容量が4.0Lと多くはないので、燃焼継続時間は約11.4時間程度になっています。
コロナ SX-E3523WY
暖房出力 | 3.47kW |
燃料消費量 | 0.337L/h |
燃焼継続時間 | 約15時間 |
油タンク容量 | 5.0L |
出力調節範囲 | 3.47~2.42kW |
コロナの最上位石油ストーブのひとつ。暖房出力は3.47kWでこちらも反射形石油ストーブの中ではトップクラスの暖房能力を誇ります。調節範囲も設定されているので、最小で2.42kWまで弱めて使用することができます。油タンクの容量は5Lと比較的多いので、燃焼継続時間は約15時間と長めになっているのが嬉しいポイント。
トヨトミ RC-S28N
暖房出力 | 2.75kW |
燃料消費量 | 0.267L/h |
燃焼継続時間 | 約13.5時間 |
油タンク容量 | 3.6L |
出力調節範囲 | 2.75~1.65kW |
出力を出来る限り弱めたいという人におすすめの石油ストーブ。定格出力は2.75kWですが、調節範囲の最小値は1.65kWで業界でも最小クラス。油タンク容量は3.6Lで少ないですが、出力を極限まで弱めることができることで、燃焼継続時間は13.5時間程度まで確保できます。
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 石油ストーブの燃費は1L当たりの燃焼継続時間のことで、燃料消費量から算出可能
- 灯油を消費した分が全て熱に替わる為、同じ出力であれば燃費は同じ
- 気圧が高いと燃料消費量が増えて燃費が悪くなる
- 燃費を上げるには、出力を下げるしかない
- 暖房感が悪くなったと感じる場合は、しんの空焼きなどメンテナンスが必要
- 石油ファンヒーターの燃費は石油ストーブとは少し違う
石油ストーブは電子制御をしていないので、燃費も非常にシンプルです。
電気も使わないので、必要なランニングコストは灯油だけ。
暖房能力を取るか、燃焼継続時間を取るか、はたまた調節範囲の広いもので切り替えられるようにするかは、部屋の大きさや予算に応じて決めることをおすすめします。