「セラミックファンヒーターの電気代は高いと良く聞くけど、実際のところはどのくらいなの?」と疑問に思う方も多いです。
この記事では、実際に電気代は1か月あたりにいくらかかるのかを解説します。
セラミックファンヒーターは気軽に買えて手軽に使える暖房機器です。コンセントを繋ぐだけで温風を吹き出してくれる為、寒い冬に着けてすぐ暖まり便利です。
ですが、セラミックファンヒーターの電気代には注意が必要。暖房能力と電気代のコストパフォーマンスを考慮した上で、購入するかどうかを見極めることが重要になります。
暖房機器の購入を検討の方や、セラミックファンヒーターが欲しいとお考えの方、まずはこの記事を読んでから検討してください。
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セラミックファンヒーターとは
セラミックファンヒーターとは、電気を使ってヒーターを発熱させ、ファンを回すことで温風を吹き出す暖房器具です。
同じく温風を吹き出す『石油ファンヒーター』と比べて、灯油を使用せずに電気だけで暖房することができる点で手軽で便利です。
本体価格も安い機種はほんの数千円で購入できますので、子供部屋や一人暮らしのワンルームにも導入し易いのが利点です。また、高い機種になると加湿機能など付加価値がプラスされていて、より一層便利なアイテムとして重宝するかと思います。
セラミックファンヒーターのメリット・デメリット
まずはセラミックファンヒーターの特徴とメリット・デメリットを確認します。
セラミックファンヒーターのメリット
電気だけで使える
セラミックファンヒーターは電気だけで暖房することができます。電源コードをコンセントに繋ぐだけですぐに使うことができます。石油ファンヒーターのように灯油を用意する必要が無く、お手軽に暖房できる点が魅力の一つです。
コンパクトで持ち運びしやすい
多くのセラミックファンヒーターがコンパクトな大きさになっています。その為、部屋間の移動に伴う持ち運びもしやすく、設置にもさほどスペースを取りません。シーズンオフに片付ける際も省スペースで済むのもメリットです。
本体価格が安い
暖房器具の中では比較的リーズナブルに購入することができます。その為、家電量販店やホームセンターなどに立ち寄った際に気軽に購入する人も多いです。安いからとりあえず買ってみるという考えの人もいます。
セラミックファンヒーターのデメリット
暖房能力が低い
セラミックファンヒーターは、エアコンや石油ファンヒーターなどと比較すると暖房能力は圧倒的に低いです。暖められる範囲が狭いのもデメリットで、基本は足元を温める程度のスポット的な使用に向いています。
乾燥しやすい
電気のみで温風を吹き出すことで乾燥しやすいのが特徴です。石油ファンヒーターやガスファンヒーターは燃料を燃やして加湿しているので乾燥しにくいですが、セラミックファンヒーターは加湿せずに温風を吹き出すので乾燥が進んでしまいます。
電気代が高い
一般的にセラミックファンヒーターは電気代が高いことがデメリットとして挙げられます。今回の本題である電気代ですが、果たしてどのくらいの電気代がかかるか、次節で実際に計算していきます。
セラミックファンヒーターの電気代は高いのか
便利なセラミックファンヒーターですが、注意しなければいけないのが電気代です。
セラミックファンヒーターの暖房能力は、すべて電気からまかないます。
石油ファンヒーターのように燃焼した熱を利用している訳ではありません。また、エアコンのようにヒートポンプによって熱交換をするという訳でも無いため、他の温風を吹き出すタイプの暖房器具と比較すると、電気代が高くなってしまうことは確実です。
実際に電気代がいくらくらいかかるのか計算してみましょう。
セラミックファンヒーターの電気代を実際に計算
まず結論を言うと、セラミックファンヒーターの1ヶ月の電気代は、7,488[円]でした。
更に、2023年6月以降に電気代が値上げされたことを考慮すると、10,368[円]という結果になります。
使用したセラミックファンヒーターと計算方法について解説します。ここでは、人気のアイリスオーヤマのセラミックファンヒーターを使って計算します。
- メーカー:アイリスオーヤマ
- 製品型式:JCH-12DD3-W
- 製品仕様:AC100V 50/60Hz、最大消費電力1200W
電気代を計算する際に着目する点は、最大消費電力(W)です。
一般的に最大消費電力として表記されているW数は、最大暖房能力時(定格時)に運転した場合の電力消費量を表します。
電力量料金の単価を東京電力で確認すると、従量電灯Bの第2段階料金で1kWh当たり26円(※2023年5月31日まで)です。(参考:東京電力ー料金単価表)
まず、1時間当たりの電気代を算出します。
消費電力(kWh) × 電力量料金の単価(円/kWh) × 1時間 = 電気代(円)となります。
1.2[kWh]×26[円]×1[時間]=31.2[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
1.2[kWh]×36[円]×1[時間]=43.2[円]
1日当たりの電気代は、およそ8時間使用すると仮定します。
31.2[円]× 8[時間]= 249.6[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
43.2[円]× 8[時間]= 345.6[円]
249.6[円]×30[日]=7,488[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
345.6[円]×30[日]=10,368[円]
よって、セラミックファンヒーターの1ヶ月当たりにかかる電気代は、7,488[円]という結果になりました。
2023年6月以降は電気料金が値上げされましたので、10,368[円]にもなります。
セラミックファンヒーターを1日中使用した場合ですが、1か月の使用で10,368円は電気代としてはかなり高い印象を受けるかと思います。
エアコンの電気代と比較
セラミックファンヒーターの比較対象として、エアコンの電気代についても計算します。今回対象としたセラミックファンヒーターは主に6~8畳向けのモデルなので、エアコンも同じ畳数のモデルで計算します。メーカーも同じアイリスオーヤマのエアコンを対象とします。
- メーカー:アイリスオーヤマ
- 製品型式:IHF-2504G・R-2504G
- 製品仕様:単相100V 50/60Hz
- 暖房能力:2.8kW (0.7~4.1)kW
- 消費電力:620W(140~1243)W
エアコンの場合、定格消費電力の後ろに()で最小から最大時の消費電力を表記しますが、今回はあまり気にしません。
エアコンは設定温度に対して差があれば運転を強くし、温度に達すれば運転を弱めます。その過程の中で上がったり下がったりするというだけです。これを平均した値が620Wということになるので、今回は620Wが計算に必要な値になります。
セラミックファンヒーターと同様に計算していきます。
まず1時間当たりの電気代は、
0.62[kWh]×26[円]×1[時間]=16.12[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
0.62[kWh]×36[円]×1[時間]=22.32[円]
1日当たりの電気代は、8時間使用すると仮定して、
16.12[円]× 8[時間]=128.96[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
22.32[円]× 8[時間]=178.56[円]
128.96[円]×30[日]=3,869[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
178.56[円]×30[日]=5,356[円]
エアコンの1か月の電気代は3,868円、値上げ後でも5,356円という結果になりました。
よって、エアコンはセラミックファンヒーターのおよそ半分の電気代で暖房することが可能ということです。(使用する環境条件によって多少前後しますので参考値となります。)
また、エアコンでは設定温度に達すれば暖房を弱めるために消費電力を抑えることが可能ですが、セラミックファンヒーターの多くは温度設定という概念は無く、強運転や弱運転のみのセレクトになります。
温度設定が無いというのは、自動的に運転レベルを調整しないということですので、自動で消費電力を抑えることはしません。但し、高級タイプのセラミックファンヒーターであれば、温度設定が可能ですので室温をセンサーで検知して弱めるモデルもあります。
しかし、セラミックファンヒーターの暖房は消費電力に依存するので、暖房能力は安い商品と高い商品でも消費電力が同じなら変わりません。エアコンに比べたら圧倒的に弱いです。
結果として、温度設定が可能であっても暖房能力そのものが弱いため、室温が設定した温度まで達するのにかなり時間がかかります。運転を弱めることもなかなかできないということになります。
石油ファンヒーターの電気代と比較
石油ファンヒーターには、電気代が高いダイニチ、電気代が安いコロナとトヨトミがあります。今回は、ダイニチとコロナの大手2社の両方にて算出します。
使用する石油ファンヒーターは同様に6~8畳向けの機種で計算していきます。
電気代が高い「ダイニチ」の場合
- メーカー:ダイニチ
- 製品型式:FW-25S4
- 製品仕様:単相100V 50/60Hz
- 暖房出力:2.50~0.68kW
- 消費電力:82W(最大火力時)
0.082[kWh]×26[円]×1[時間]=2.132[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
0.082[kWh]×36[円]×1[時間]=2.952[円]
2.132[円]×8[時間]=17.1[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
2.952[円]×8[時間]=23.6[円]
17.1[円]×30[日]=513[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
23.6[円]×30[日]=708[円]
よって、ダイニチの石油ファンヒーターでは、1か月当たり513円、値上がり後でも708円の電気代がという結果です。
石油ファンヒーターの中でも電気代が高いダイニチでも、1ヶ月当たりの電気代は千円以下ということになります。
電気代が安い「コロナ」の場合
- メーカー:コロナ
- 製品型式:FH-M2523BY
- 製品仕様:単相100V 50/60Hz
- 暖房出力:2.50~0.66kW
- 消費電力:14W(最大火力時)
0.014[kWh]×26[円]×1[時間]=0.363[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
0.014[kWh]×36[円]×1[時間]=0.504[円]
0.363[円]×8[時間]=2.9[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
0.504[円]×8[時間]=4.0[円]
2.9[円]×30[日]=87[円]
※2023年6月1日以降:1kWh 36円に値上げの場合
4.0[円]×30[日]=120[円]
よって、コロナの石油ファンヒーターの電気代は、1か月で87円、値上がり後では120円という結果になりました。セラミックファンヒーターと比較するとかなり安いことが分かります。
ちなみに
ちなみに、石油ファンヒーターは電気代にプラスで灯油代もかかります。参考までに灯油代も同様に計算してみると、ダイニチでは以下のようになります。
・ダイニチの対象モデルは、燃料消費量は0.243[L/h]なので1時間当たりに0.243[L]消費します。
1日当たり:0.243[L]×8[時間]=1.944[L]
・灯油の単価をざっくり80[円/L]とすると、
1.944[L]×80[円]=155.5[円/日]
1か月当たり、155.5[円]×30[日]=4,665[円/月]
(燃料消費量はダイニチもコロナもほぼ同等=灯油代も同等)
つまり、電気代と灯油代を足しても、セラミックファンヒーターよりランニングコストが安いという計算結果になりました。
石油ファンヒーターは灯油代がかかることはネックですが、電気代に関しては非常に安いということがわかるかと思います。
電気代の計算結果をまとめて比較
セラミックファンヒーターと、その他の比較製品における1か月当たりの電気代をまとめると以下の通りです。
製品 | 一か月の電気代 | その他費用 | 費用合計 | 暖房能力 |
---|---|---|---|---|
ファンヒーター | セラミック7,488円 | なし | 7,488円 | 低い |
エアコン | 3,869円 | なし | 3,869円 | 高い |
石油ファンヒーター | 87円 | 513円灯油代 4,665円 | 4,752円 | 5,178円非常に高い |
電気代だけで考えても最も高いですが、石油ファンヒーターの電気代と灯油代を足した金額よりも高いという結果になりました。
また、暖房能力の低さから考えても、電気代の高さがネックとなってしまうのは仕方がないのかもしれません。(※比較する機種や使用環境によっても当然ながら異なります)
セラミックファンヒーターの電気代が高いのは事実。同クラスの他の暖房器具を比較しても明らかに電気代が高いという結果。
セラミックファンヒーターの電気代を節約する方法
電気代が高いセラミックファンヒーター。少しでも電気代を抑えて安くしたいと考える人も多いかと思います。そこで、セラミックファンヒーターを有効活用しつつ、電気代を抑えて使用する方法を紹介します。
省エネ・節電モードを使用
セラミックファンヒーターの中には、省エネモードや節電モードが備わったモデルもあります。
これらの運転モードは、基本的に消費電力を抑えるため、暖房感も同時に低減してしまいます。それでも、電気代を優先したい場合や必要以上に暖める必要が無い場合には、率先して使用することで節電効果が見込めます。
人感センサーを活用
人感センサーを備えたセラミックファンヒーターも多く存在します。
人感センサーは人の動きを検知して、オンとオフを切り替えることで、人がいない時に無駄な暖房をすることを防ぎます。足元暖房などのピンポイントで使用している時などに有効で、毎回電源スイッチをオン/オフしなくても、近くに来たら暖房を開始、離れたら運転停止してくれます。
他の暖房器具と併用
他の暖房器具を併用することが最大の節約方法になります。
そもそも暖房能力の低さから部屋全体の暖房には不向きであるため、エアコンや石油ファンヒーターなどの補助用として使用することがおすすめです。部屋全体はメインの暖房器具に任せて、足元や冷える場所だけにスポット的にセラミックファンヒーターを使用すれば、無駄な消費電力を減らすことが可能と言えます。
セラミックファンヒーター購入時の注意
電気代の高さを踏まえた上で、セラミックファンヒーターを購入する際には気を付けた方が良い点をまとめます。
メインの暖房器具としては使わない
繰り返しになりますが、セラミックファンヒーターは暖房能力が乏しいです。お部屋全体の空気を暖めたいのであれば、セラミックファンヒーターは選ばない方が無難です。メインの暖房器具としては、エアコンや石油ファンヒーターなどを選ぶべきです。
暖房能力が低いと、使用環境によってはいつまで経っても室温が上がらない可能性が高いです。寒いのに電気代は高いという過酷な事態に陥ることになりますので、特に理由が無ければやめておきましょう。
ポイント的な暖房としてならおすすめ
部屋全体を暖める用としては能力不足なセラミックファンヒーターですが、ポイントで使用するには非常に便利です。
例えば、脱衣所や台所、トイレなどで足元が寒いときにセラミックファンヒーターを使えば、運転を入れてすぐに温風が出てきます。コンパクトで持ち運びがしやすいものも多いため、家の中で移動する際にセラミックファンヒーターも持っていけばどこでも足元などの暖房ができます。
個人的におすすめする使用方法は、エアコンで暖房している居間やリビングでの併用です。
エアコン暖房では床付近はなかなか暖まりにくいため、足元は冷えてしまいがちです。そこでセラミックファンヒーターを足元用として併用することで全身が暖まります。
暖房出力が高いものを選ぶべき
誤解が無いように説明しますと、消費電力が高ければ電気代も高くなる訳ですが、消費電力が低い=暖房能力が弱いセラミックファンヒーターは買う意味がないです。
なぜかというと、セラミックファンヒーターが吹き出す温風の温度は他の暖房機器と比較しても低いです。温風温度が低いと、少し離れた場所では温風が普通の風となってしまい暖房感を一切得られません。むしろ、風のせいで寒く感じてしまいます。エアコンの暖房でも設定温度を低くすると風が冷たく感じたりしたことありませんか。
特に、大風量を謳っているにも関わらず暖房出力(消費電力)が1000Wにも満たないセラミックファンヒーターを選んでしまえば必ず後悔します。目安としては最低でも1000W以上のものを選びましょう。ちなみに私が調べた中では、大手家電メーカーのセラミックファンヒーターは暖房出力1200Wが多いです。
まとめ:使い方の工夫次第で便利な暖房に!
セラミックファンヒーターは安価で手頃な反面、暖房能力の弱さや消費電力の高さが弱点となります。
メインの暖房機器としての使用ではなく、補助用の暖房としての使用を推奨いたします。エアコンとの併用が最も適しているかと思います。エアコンの弱点である足元の暖まりにくさをセラミックファンヒーターで補うことで快適になるかと思います。
台所などのポイント的な暖房には便利ですし、持ち運びのしやすさも魅力的です。用途・目的を定めた中で、セラミックファンヒーターの賢い使用方法を検討してみてください。