セラミックファンヒーターは気軽に買えて手軽に使える暖房機器です。コンセントを繋ぐだけで温風を吹き出してくれる為、寒い冬に着けてすぐ暖まり便利です。ですが、セラミックファンヒーターの電気代には注意が必要です。暖房能力と電気代のコストパフォーマンスを考慮した上で、購入するかどうかを見極めることが重要になります。暖房機器を新しく購入しようとお考えの方、セラミックファンヒーターが欲しいとお考えの方、一度立ち止まって本記事をお読みになって参考にしてください。
セラミックファンヒーターとは

セラミックファンヒーターとは、電気を使ってヒーターを発熱させ、ファンを回すことで温風を吹き出す暖房器具です。
同じく温風を吹き出す石油ファンヒーターと比べて、灯油を使用せずに電気だけで暖房することができる点で手軽で便利です。本体価格も安い機種はほんの数千円で購入できますので、子供部屋や一人暮らしのワンルームにも導入し易いのが利点です。
また、高い機種になると加湿機能など付加価値がプラスされていて、より一層便利なアイテムとして重宝するかと思います。
セラミックファンヒーターの電気代

ここから本題に入ります。便利なセラミックファンヒーターですが、注意しなければいけないのが電気代です。
セラミックファンヒーターでは、石油ファンヒーターのように燃焼した熱を利用している訳ではありません。また、エアコンのようにヒートポンプによって熱交換をするという訳でも無いため、暖房能力はすべて電気からまかないます。つまり、他の温風を吹き出す暖房器具と比較すると、電気代が高くなってしまうことは確実です。
そこで、実際に電気代がいくらくらいかかるのか計算してみましょう。
電気代を実際に計算した結果
ここでは人気のアイリスオーヤマのセラミックファンヒーターを使って計算します。
- メーカー:アイリスオーヤマ
- 製品型式:JCH-12DD3-W
- 製品仕様:AC100V 50/60Hz、最大消費電力 1200W
電気代を計算する際に着目する点は、最大消費電力(W)です。一般的に最大消費電力として表記されているW数は、最大暖房能力時(定格時)に運転した場合の電力消費量を表します。
電力量料金の単価を東京電力で確認すると、従量電灯Bの第2段階料金で1kWh当たり26円です。(2020年10月時点)
(参考:東京電力ー料金単価表)
まず、1時間当たりの電気代を算出します。
消費電力(kWh) × 電力量料金の単価(円/kWh) × 1時間 = 電気代(円)となります。
1.2[kWh]×26[円]×1[時間]=31.2[円]
1日当たりの電気代は、およそ8時間使用すると仮定します。
31.2[円]× 8[時間]= 249.6[円]
249.6[円]×30[日]=7,488[円]
よって、セラミックファンヒーターの1か月当たりにかかる電気代は、7,488[円]という結果になりました。
セラミックファンヒーターを1日中使用するかどうかは別として、1か月の使用で7,488円は電気代としてはかなり高い印象を受けるかと思います。
比較例1:エアコンの電気代
比較対象として、エアコンの電気代についても計算してみます。
今回対象としたセラミックファンヒーターは主に6~8畳向けのモデルなので、エアコンも同じ畳数のモデルで計算します。メーカーも同じアイリスオーヤマのエアコンを対象とします。
- メーカー:アイリスオーヤマ
- 製品型式:IHF-2504G・R-2504G
- 製品仕様:単相100V 50/60Hz
- 暖房能力:2.8kW (0.7~4.1)kW
- 消費電力:620W(140~1243)W
エアコンの場合、定格消費電力の後ろに()で最小から最大時の消費電力を表記しますが、今回はあまり気にしません。エアコンは設定温度に対して差があれば運転レベルを強くしますし、温度に達すれば運転を弱めます。その過程の中でこの範囲内で上がったり下がったりするというだけです。これを平均した値が620Wということになるので、今回は620Wが必要な値になります。
セラミックファンヒーターと同様に計算していきます。
まず1時間当たりの電気代は、
0.62[kWh]×26[円]×1[時間]=16.12[円]
1日当たりの電気代は、8時間使用すると仮定して、
16.12[円]× 8[時間]=128.96[円]
128.96[円]×30[日]=3,869[円]
1か月の電気代は4千円以下という結果になりました。
よって、エアコンはセラミックファンヒーターのおよそ半分の電気代で暖房することが可能ということです。※使用する環境条件によっても多少前後しますのであくまで参考値となります。
また、エアコンでは設定温度に達すれば暖房を弱めるために消費電力を抑えることが可能ですが、セラミックファンヒーターの多くは温度設定という概念は無く、強運転や弱運転のみのセレクトになります。温度設定が無いというのは、自動的に運転レベルを調整しないということですので、自動で消費電力を抑えることはしません。高級タイプのセラミックファンヒーターであれば、温度設定が可能ですので室温をセンサーで検知して弱めるモデルもあります。
しかし、それでもセラミックファンヒーターの暖房は消費電力に依存する為、暖房能力自体は安いものと高いものでも消費電力が同じなら変わりません。エアコンに比べたら圧倒的に弱いです。結果として、温度設定が可能であっても暖房能力が弱いため、室温が設定した温度まで達するのにかなり時間がかかります。運転を弱めることもなかなかできないということになります。
比較例2:石油ファンヒーターの電気代
石油ファンヒーターには主に電気代が高いブンゼン式(ダイニチ)と電気代が安いポンプ噴霧式(コロナ)、ポット式(トヨトミ)の3種類があります。今回は大手2社の両方にて算出します。
同様に6~8畳向けの機種で計算していきます。
電気代が高めのダイニチの場合
- メーカー:ダイニチ
- 製品型式:FW-25S2
- 製品仕様:単相100V 50/60Hz
- 暖房出力:2.50~0.68kW
- 消費電力:82W(最大火力時)
0.082[kWh]×26[円]×1[時間]=2.132[円]
2.132[円]×8[時間]=17.1[円]
17.1[円]×30[日]=513[円]
よって、ダイニチの石油ファンヒーターでは1か月当たり513円の電気代が掛かるという結果です。
電気代が安めのコロナの場合
- メーカー:コロナ
- 製品型式:FH-M2520BY
- 製品仕様:単相100V 50/60Hz
- 暖房出力:2.50~0.66kW
- 消費電力:14W(最大火力時)
0.014[kWh]×26[円]×1[時間]=0.363[円]
2.132[円]×8[時間]=2.912[円]
2.912[円]×30[日]=87.4[円]
よって、コロナの石油ファンヒーターの電気代は1か月で87円ほどという結果になりました。
ちなみに、石油ファンヒーターは電気代にプラスで灯油代もかかります。灯油代も同様に計算してみると、
ダイニチの方では、燃料消費量は0.243[L/h]ですので1時間当たりに0.243[L]消費します。
ダイニチの方では、燃料消費量は0.243[L/h]ですので1時間当たりに0.243[L]消費します。
1日当たり:0.243[L]×8[時間]=1.944[L]
灯油の単価をざっくり80[円/L]とすると、
1.944[L]×80[円]=155.5[円/日]
1か月当たり、155.5[円]×30[日]=4,665[円/月]
(燃料消費量はダイニチもコロナもほぼ同等)
つまり、電気代と灯油代を足してもセラミックファンヒーターよりは1か月当たりのランニングコストが安いという計算結果になりました。石油ファンヒーターは灯油代がかかることはネックですが、電気代に関しては非常に安いということがわかるかと思います。
1か月当たりの電気代をまとめると以下の通りです。
製品種別 | 1か月当たりの電気代 |
---|---|
セラミックファンヒーター | 7,488[円] |
エアコン | 3,869[円] |
石油ファンヒーター(ダイニチ) | 513[円]+灯油代 |
石油ファンヒーター(コロナ) | 87[円]+灯油代 |
セラミックファンヒーター購入時の注意点

電気代の高さを踏まえた上で、セラミックファンヒーターを購入する際には気を付けるべき点をまとめます。
メインの暖房器具としてはおすすめしない
セラミックファンヒーターは暖房能力が乏しいです。お部屋全体の空気を暖めたいのであれば、セラミックファンヒーターは選ばない方が無難です。メインの暖房器具としては、エアコンや石油ファンヒーターなどを選ぶべきです。
暖房能力が低いと、使用環境によってはいつまで経っても室温が上がらない可能性が高いです。寒いのに電気代は高いという過酷な事態に陥ることになりますので、特に理由が無ければやめておきましょう。
ポイント的な暖房としてならおすすめ
部屋全体を暖める用としては能力不足なセラミックファンヒーターですが、ポイントで使用するには非常に便利です。
例えば、脱衣所や台所、トイレなどで足元が寒いときにセラミックファンヒーターを使えば、運転を入れてすぐに温風が出てきます。コンパクトで持ち運びがしやすいものも多いため、家の中で移動する際にセラミックファンヒーターも持っていけばどこでも足元などの暖房ができます。
私個人的におすすめする使用方法は、エアコンで暖房している居間やリビングでの併用です。エアコン暖房では床付近はなかなか暖まりにくいため、足元は冷えてしまいがちです。そこでセラミックファンヒーターを足元用として併用することで全身が暖まります。
暖房出力(消費電力)が高いものを選ぶべき
誤解が無いように説明しますと、消費電力が高ければ電気代も高くなる訳ですが、消費電力が低い=暖房能力が弱いセラミックファンヒーターは買う意味がないです。
なぜかというと、セラミックファンヒーターが吹き出す温風の温度は他の暖房機器と比較しても低いです。温風温度が低いと、少し離れた場所では温風が普通の風となってしまい暖房感を一切得られません。むしろ、風のせいで寒く感じてしまいます。エアコンの暖房でも設定温度を低くすると風が冷たく感じたりしたことありませんか。
特に、大風量を謳っているにも関わらず暖房出力(消費電力)が1000Wにも満たないセラミックファンヒーターを選んでしまえば必ず後悔します。目安としては最低でも1000W以上のものを選びましょう。ちなみに私が調べた中では、大手家電メーカーのセラミックファンヒーターは暖房出力1200Wが多いようです。
まとめ
セラミックファンヒーターは安価で手頃な反面、暖房能力の弱さや消費電力の高さが弱点となります。
メインの暖房機器としての使用ではなく、補助用の暖房としての使用を推奨いたします。エアコンとの併用が最も適しているかと思います。エアコンの弱点である足元の暖まりにくさをセラミックファンヒーターで補うことで快適になるかと思います。
台所などのポイント的な暖房には便利ですし、持ち運びのしやすさも魅力的です。用途・目的を定めた中で、セラミックファンヒーターの賢い使用方法を検討されてみてはいかがでしょうか。
この記事で挙げたセラミックファンヒーターについては下記にリンクを貼っておきますので、興味のある方は参照ください。
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