石油ストーブや石油ファンヒーターは本当に加湿するのか疑問を抱く方も多いかと思います。なかには、石油ストーブで加湿するはずなのに部屋が乾燥していると感じるという方もいるかと思います。それには湿度の定義と人間の湿度感覚が関係しています。乾燥しすぎも良くないですが、加湿しすぎることも当然悪い影響があります。今、石油ストーブや石油ファンヒーターを使用しているけど、加湿器を併用しようか悩んでいる方に対して役立つ内容をお届けします。
理想の湿度
◎理想の湿度は40~60%
私たちが生活する上での理想の湿度は一般的に40~60%と言われております。
この湿度というのは、相対湿度という温度に依存する湿度の表し方で、家庭用などの一般的なの湿度計も同じです。
この理想の湿度数値には当然ですが理由があって、低すぎず高すぎない湿度範囲となっています。では、なぜ、40~60%が理想なのでしょうか。(参考:サンワカンパニー「住まいづくりのコンシェルジュ」)
湿度が低すぎるとどうなる?
湿度が低く乾燥した環境は、悪い影響がいくつかあります。
ウイルスが活性化
湿度が低すぎる場合の一つがウイルスの活性化です。インフルエンザウイルス対策で加湿すること重要なのは広く知られています。
全てのウイルスに当てはまる訳ではありませんが、多くのウイルスは乾燥した空気を好むため、部屋が乾燥すればするほど風邪やインフルエンザのようなウイルス感染リスクが高まります。
研究者のG・J・ハーパー氏が1961年に発表した研究によれば、湿度が50%以上になるとウイルスが激減するということです。(survival test with for virusesという論文)
湿度が仮に20%まで下がるとウイルス生存率が60~70%ですので、乾燥がウイルスの活性化に繋がることが分かります。
肌に良くない
学術的な研究結果はありませんが、美容の観点で肌に良いとされている湿度は60%程度だということです。乾燥していると肌がつっぱるような感じがしたり、カサカサしてきます。
喘息などにも悪影響
湿度が低いとのどの粘膜も乾燥します。粘膜が乾燥してしまうと、喘息やアレルギー性鼻炎などの症状が悪化することが考えられます。
持病がある方や、幼児・お年寄りがいる家庭は気を付けた方がよさそうです。
湿度が高すぎるとどうなる?
反対に湿度が高すぎる場合にも良くない影響があります。
カビやダニの発生
カビは室温が20~30℃のとき、湿度が60~80%以上を超えると繁殖するとされています。カビの発生・繁殖には60%以下を保つことが重要となります。(参考記事:ホームメイト「カビ対策」)
ダニも同じく室温20~30℃の時に、湿度が60%以上だと発生しやすいと言われております。カビと合わせても60%以上の湿度はリスクが大きいですね。(参考記事:ホームメイト「ダニ対策」)
夏場は熱中症になりやすい
湿度は熱中症にも大きく影響します。熱中症になりやすいのは温度28℃以上、湿度70%以上ということです。冬は起こりにくいですが、身体への黄色信号も出てくるようですね。(参考:環境省HP「WBGT」)
石油ストーブが加湿するのは本当
石油ストーブや石油ファンヒーター、ガスストーブが加湿をするというのは本当のことです。化学的分野の知識が少しでもある方なら当たり前のことなのですが、意外と知らない方もいるようです。
また、昔から自宅では石油ストーブと一緒に加湿器やヤカンを併用していたという方は、おじいちゃんやおばあちゃんから「石油ストーブ=乾燥する」という間違った知識として伝えられていたかもしれません。
ではなぜ、加湿をするのかという理屈について触れていきましょう。
なぜ加湿するのか
灯油を1ℓ燃焼すると水を約1ℓ空気中に放出する
灯油のような化石燃料を燃焼すると、二酸化炭素や一酸化炭素などの他にも「水」を大気中に放出します。理屈はちょっと違いますが、液体を燃やせば水が出るということはイメージしやすいのではないでしょうか。
更に深く触れていくと、灯油は混合物ですので正式な化学式は表記できませんが、炭素Cと水素Hの化合物でC12H26からC14H30ほどで構成されています。燃焼に空気中の酸素O₂を使うことで、二酸化炭素と水に変わります。(実際には微小な物質が他にもあります)CとHとOが合わさりますので、CO₂(二酸化炭素)とH₂O(水)ができる訳ですね。
CH + O₂ → H₂O + CO₂
仮に、灯油をC12H26と定義すると、
C12H26+18.5O₂→12CO₂+13H₂O
この化学反応式に基づいて計算すると、灯油を1L燃焼させた場合には水もおおよそ1L発生する結果になります。灯油を燃やせば燃やすほど同量の水が空気中に放出されるということです。
ガスについても同様
例として、プロパンガスの化学式はC3H8です。プロパンガスの燃焼を化学反応式にすると、
C3H8 + 5O₂ → 3CO₂ + 4H₂O
となります。ガスの燃焼でも水が発生することが分かります。
結構な量を加湿しているという事実に驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、石油ストーブを燃焼しているのに部屋の湿度計は上がらない、もしくは下がっていくという体験をした方もいるかもしれません。実際にそういう記事を見たこともあります。
では、なぜ加湿しているのにも関わらず、湿度表示が上がらないのかについて解説していきます。
部屋の湿度表示が下がる理由
石油ストーブや石油ファンヒーターを使用しているけど、部屋の湿度計を見ていると湿度は変わらない(むしろ下がる)という事象にはいくつかの要因が絡んできます。
相対湿度と絶対湿度
湿度には、相対湿度と絶対湿度の2つがあります。
一般的に使われる湿度(%)は相対湿度のことを指します。相対湿度とは、その温度の飽和水蒸気量に対する水分量をパーセント表示で表します。
つまり、相対湿度は温度上昇に伴って飽和水蒸気量が増加するため、部屋の温度が上がれば水分量が変わっていなくても、湿度(%)は下がってしまうのです。これが素人や知識が無い人に多い勘違いの原因です。
石油ストーブでは暖房しながら加湿していますので、温度上昇に対する加湿量の関係で湿度計には表れにくいです。ですが、部屋の中でも窓際などの温度が低い場所では多量の結露が確認できます。これが加湿している何よりの証拠となります。また、一定時間燃焼した後に石油ストーブを消すと、水分は変わらず室温は下がりますので湿度(%)は増えていきます。
対して、エアコンでは暖房をしながら加湿は一切しませんので、石油ストーブと比較にならないほど湿度は低下します。ただし、温度上昇スピードも遅いため分かりにくいかもしれません。
環境によって変わる
地域が変われば湿度も当然違います。太平洋側の冬は基本的に乾燥しがちですが、日本海側の冬は降雪や降雨が多く湿りがちです。
乾燥しがちな地域で石油ストーブを使用した場合と湿りがちな地域で使用した場合とでは、当然ですが乾燥している地域の方が部屋の湿度(%)も低くなりがちです。ですので、石油ストーブによる加湿も感じにくいと思われます。
加湿する暖房器具と加湿しない暖房器具
それでは、加湿をする暖房器具と加湿をしない暖房器具にはどの製品が含まれるのでしょうか。
加湿する暖房器具
- 石油ストーブ
- 石油ファンヒーター
- ガスストーブ
(FF式を除く)
基本的に石油やガスのような燃料を燃焼させる暖房器具は水を放出しますので加湿します。
新築の物件で石油暖房機を推奨しないのはこの加湿による影響の為です。加湿による水分が結露として窓や壁についてしまうと、カビや木材の腐敗を促進させるからです。
ただし、FF式の石油ストーブ(ファンヒーター)は屋外に排気しますので、水分も外に出します。そのため、部屋の中を加湿することはありません。
石油ストーブ・石油ファンヒーターのおすすめモデルについては別の記事にまとめていますので、こちらをご参照ください。
加湿しない暖房器具
- エアコン
- 電気ストーブ
- オイルヒーター
など
電気によって暖房を行う製品はすべて加湿しません。(加湿機能が付いていれば別ですが)
エアコンはヒートポンプという熱交換技術で暖房を行い、電気ストーブはヒーター熱を利用して暖房します。燃焼のような化学的反応はありませんので、水分を放出することはありません。
電気ストーブとオイルヒーターについて別の記事でまとめていますので、こちらをご参照ください。
加湿器は要る?要らない?
加湿器は基本的に不要!ただし環境によっては使用すべき
先に述べた通り、環境によってことなりますので一概には言えません。ですが、乾燥が厳しい地域を除いて石油ストーブや石油ファンヒーターを使用していれば十分な加湿ができています。必要以上に加湿することは良くないので、加湿器も不要だと判断します。
また、家の断熱性や窓の多さなどでも状況が変わります。窓や壁の結露を一つの指標として、加湿が足りないと感じるのであれば加湿器の導入をしても良いと思います。
人間の感覚というのは、あまりあてになりません。のどが渇くや肌が乾燥するといってもそれが湿度によるものかどうかなんてハッキリ言って分かりません。なので、湿度計の表示を見て判断することも良いですが、湿度計も部屋の置く位置によって全然変わりますので、直接暖房の影響を受けない場所に置かれることをおすすめします。
(石油ファンヒーターの風が当たる場所などは論外です)
まとめ
石油暖房機を使用している環境で加湿器は基本的に不要という話をしましたが、エアコンや電気ストーブには加湿器を併用することを推奨します。
エアコンや電気ストーブについては湿度が高い低いという話ではなく、一切加湿しない暖房機ですので間違いなく乾燥していきます。身体への悪影響を及ぼす場合もありますので注意しましょう。
湿度を適正に保ちつつ、暖かい冬をお過ごしください。