冬は大雪や暴風によって停電してしまうことが多く、極寒の中で暖房できなくなるのが死活問題です。また、地震によって停電してしまうこともこれまでに多々ありました。
その為、今回は停電時でも使える暖房器具を解説。おすすめモデルまで紹介します。
2011年に発生した東日本大震災や2024年の能登半島地震では真冬にも関わらず停電してしまった地域が多くありました。電気が無いとエアコンや電気ストーブは全く使えません。
最悪な状況を防ぐ為にも、石油ストーブのような電気を使わない暖房器具を備蓄しておくことが重要。停電時も役立つ暖房器具はどれか解説します。
冬場の停電で最も困るのが暖房
普段から多くの電気を使いながら生活している私たちですが、停電してしまうと様々な困りごとが生じてしまいます。その中でも、冬場に限って言えば、停電で一番困るのは『暖房ができなくなること』です。真冬に暖房ができないことは死活問題であり、特に寒冷地では命の危険にさらされてしまいます。
現在、世界的にもカーボンニュートラルが進められている背景もあって、石油やガスを使った暖房器具も少しずつ減少しているのが実情。化石燃料を用いた暖房器具に代わって、エアコンのような環境にやさしい空調製品や電気だけで暖房できるオイルヒーターなどが多く普及しています。
しかし、これらの電気で動く暖房器具は、裏を返せば電気が無いと全く使い物になりません。電気があるから暖房することができている訳であって、もし冬に停電してしまった時の状況を考えると恐ろしくないでしょうか。日本は地震や水害、大雪などの災害大国でもあります。そんな災害大国で電気だけに依存することがどれほど恐ろしいことなのか。被災者や寒冷地に住む人々は重々に承知していることと思います。
万が一、冬に停電になってしまった場合でも暖を取ることができるように予め備えておくことが重要です。停電になると使えなくなってしまう暖房器具と、停電時でも使える暖房器具をチェックしておきましょう。
停電時に使えなくなる暖房器具
実際に電気が無いと使えない暖房器具、つまり停電してしまうと暖房することができなくなってしまう暖房器具は何があるのか。代表的なものを以下にリストアップします。
- エアコン
- 電気ストーブ
- セラミックファンヒーター
- オイルヒーター
- オイルレスヒーター
- 石油ファンヒーター
- FF式石油ストーブ
- ガスファンヒーター
- 電気こたつ
- 電気毛布
- ホットカーペット
など
使えなくなる暖房器具をざっと並べましたが、基本的には電源を用いる暖房器具はすべて使えなくなってしまいます。一家に一台は設置されているエアコンですら、停電になってしまえば何も意味を成しません。
また、ここで注意しておきたいのが、石油ファンヒーターやガスファンヒーターです。石油ストーブと混乱してしまい、「化石燃料だから停電しても使える」と誤解している人が意外にも多いです。一般的な石油ファンヒーターやガスファンヒーターは電気を使って燃焼を制御しているので、停電時には使えません。
石油ストーブと石油ファンヒーターは似て非なるものですので、注意しておきましょう。
石油ファンヒーターと石油ストーブの違いについては別の記事でまとめていますので、違いが良く分からないという人はチェックしてみて下さい。
お湯も沸かせなくなる
停電時には、給湯器も使えなくなります。エコキュートのような電気給湯器だけでなく、石油給湯器やガス給湯器も使えません。例外として、台所用小型湯沸かし器やBF式風呂釜など電気が無くても給湯できるものもありますが、これらを設置している家庭は多くありません。
当然ながら電気ケトルや電気ポットも使うことはできません。よって、お湯を沸かせるのは、やかんに水を入れてガスコンロや石油コンロを使う方法しかありません。もしくは、古い家であれば囲炉裏や暖炉で直火で沸かす方法もあります。ただ、多くの一般家庭ではガスコンロがあれば良い方でしょう。そう考えると、ガスコンロは意外にも停電時に活躍する防災製品なのです。
停電時はお湯を沸かせなくなることを想定しておくと良いです。ガスコンロや石油ストーブのような燃料だけで燃焼することができて、お湯を沸かせるものを準備しておくことをおすすめします。
停電でも使える暖房器具はこれ!
それでは、停電時でも使用できる暖房器具は何なのか、代表的なものを下記にリストアップします。
- 石油ストーブ
- ガスストーブ(モデルによる)
- カセットガスストーブ
- カセットガスファンヒーター
- 暖炉
- バイオエタノール暖炉
上記にいくつか挙げましたが、これらの中で現実的なことを考えると石油ストーブ、カセットガスストーブ、カセットガスファンヒーターの3つかなと思います。暖炉や薪ストーブなどは限られた家でしか使用できません。
石油ストーブ
電源不要で使える暖房器具の最も身近な製品が石油ストーブです。電気が無くても灯油があれば暖房することが可能です。点火する際に電池を使うものもありますが、ライターやチャッカマンがあれば代用できます。家電量販店やホームセンターでも購入することができるので、気軽に入手しやすいのも魅力です。
石油ストーブのもう一つのメリットは、お湯を沸かせるということ。上面にヤカンを置くことができるので、暖房しながらお湯を作ることができます。これらを考慮すると、石油ストーブが最も防災製品として優れた暖房器具であると言えるでしょう。
ガスストーブ
ガスストーブも電気を使わずに暖房できる器具の一つ。全てのガスストーブが電源不要という訳ではありませんが、乾電池で点火できるタイプは電気無しで使用できます。都市ガス仕様のものとプロパンガス仕様のものがあるので、居住する地域に応じて選ぶ必要があります。
ただし、ガスストーブは家庭のガス管からホースで接続する必要があるため、新しく導入する為には工事が必要となります。その為、賃貸などでは使用できませんし、一軒家で新しく導入するにも高額な費用が掛かってしまうことがデメリットです。
カセットガスストーブ
カセットガスを用いたストーブがカセットガスストーブです。カセットガスストーブの原理はカセットガスコンロと同じで、点火はカチッという圧電素子によって行います。その為、カセットガスをセットするだけで電気は使いません。燃料となるカセットガスも備蓄しやすいのに加えて、セットするだけで手軽に暖房できるのが魅力です。
デメリットとしては、カセットガスなのですぐに燃料が無くなってしまうことと、暖房能力が低い点になります。その為、日常使いするには物足りない暖房器具なので、防災用かもしくは足元だけといったポイント的な暖房に向いています。
カセットガスファンヒーター
カセットガスストーブと同じで、カセットガスを使ったファンヒーターです。ファンを回す分、カセットガスストーブよりも暖房感は強くなります。現在ではイワタニのカセットガスファンヒーターしか市場では見かけません。ファンを回す為の電気は、熱を利用した発電素子によって賄っています。
デメリットはカセットガスストーブと同じで、燃料が無くなりやすいのと暖房能力の弱さです。ファンヒーターと言えど、燃料消費量はたった2.0kW程度なので、部屋全体を温めるのは難しいです。それでもガスを燃やしているので、燃料と時間さえかければ十分暖まります。
暖炉
日本家屋ではなかなかお目に掛からない暖炉ですが、薪を燃料とするので停電時には活躍します。直火なので暖房能力も非常に高く、部屋全体を暖めるのも余裕です。ただし、燃料となる薪が無いとどうにもできないので、薪を備蓄しておく必要があります。新築で家を建てる場合や雪が多く降る地域であれば、暖炉を家に設置するのも停電対策になります。
バイオエタノール暖炉
暖炉は暖炉でも、木材を使わないバイオエタノール暖炉という暖房器具もあります。現在では、おしゃれな高級レストランやお金持ちの人が自宅に観賞用として導入されていることがほとんどです。燃料に使うバイオエタノールは、とうもろこしなどの植物から作られた燃料で、燃やしても一酸化炭素や煙が出ないので環境にも良いとされています。
バイオエタノール暖炉の問題となるのはコストが高いことと、暖房能力が低いことです。バイオエタノール暖炉自体が高額ですが、燃料となるバイオエタノールも灯油やガスと比べれば高価であり、費用に対する暖房能力がかなり低いです。現状では防災用として使用するのは非常に厳しいと思われます。
ポータブル電源で対応するという方法も
暖房器具を防災用に備蓄するのではなく、電気を備蓄しておくという方法もあります。それが昨今需要が高まりつつあるポータブル電源です。
ポータブル電源は発電することはできませんが、電気を一定量備蓄しておくことができます。つまり、ポータブル電源があれば、普段から使用している暖房器具も使用できるものが出てきます。
定格出力や定格容量は、そのポータブル電源によって異なりますので、購入する際には使いたい家電の消費電力をチェックしてからモデルを選ぶ必要があります。
また、消費電力が定格出力を下回っていたとしても、電気ストーブのような高い電力を消費し続ければすぐにポータブル電源の容量が無くなってしまいます。
停電時、もしくはアウトドアでポータブル電源を使って暖房器具を運転したい場合は、できる限り消費電力が低い暖房器具を選ぶことをおすすめします。ただし、セラミックファンヒーターなどの電気ストーブは、消費電力が低いほど暖房能力が低いので、暖かさとのバランスを取る必要があります。
ポータブル電源で注意が必要なのは、ポータブル電源の定格出力と使用する暖房器具の消費電力です。暖房器具の消費電力がポータブル電源の定格出力を超えていた場合、暖房器具を使用することはできません。
ポータブル電源には石油ファンヒーターがおすすめ!
ポータブル電源を使って暖房器具を運転したい場合は、暖房能力が高くて消費電力が低い石油ファンヒーターがおすすめです。
石油ファンヒーターは灯油を使用する代わりに、他の暖房器具に比べて消費電力が非常に低いです。
石油ファンヒーターの中でも消費電力が高いとされるダイニチにおいても、定格時の電力は400W程度です。コロナやトヨトミの石油ファンヒーターであれば、定格時でも20W程度の消費電力で済みます。
ただし、コロナの場合は点火だけ最大650Wほど消費するので注意が必要です。コロナではそんな点火時の消費電力を抑えた、ポータブル電源対応石油ファンヒーターも発売しています。
コロナの石油ファンヒーターについては個別に解説・紹介していますのでチェックしてみてください。
つまり、定格出力1000W以上のポータブル電源であれば、基本はどの石油ファンヒーターも使用することができます。ちなみに、コロナのポータブル電源対応石油ファンヒーターであれば、定格出力200Wのポータブル電源でも使用可能です。
停電時にもおすすめの暖房器具【5選】
災害時や防災時の備蓄用としておすすめの暖房器具を紹介します。迷ったらこれを買っておけば間違いなしのモデルを5つだけピックアップしますので、何を買って良いか良く分からない人は参考にしてみて下さい。
石油ストーブ トヨトミ RS-G24M(W)
防災推奨レベル | |
使用燃料 | 灯油 |
本体サイズ | 幅428×奥行315×高さ453 mm |
暖房出力 | 2.35~2.00kW |
適用畳数 | 木造6畳/コンクリ9畳 |
本体重量 | 7.5kg |
本来なら点火時に必要な電池やマッチ、ライターが一切不要な石油ストーブ。手回し式の発電装置によって、回すだけで点火することができるという正に災害時に心強い暖房器具です。
実際に停電した際、電池もライターも無いという状況は十分にあり得るかと思います。そんなことさえも心配する必要が無いのが大きな魅力です。暖房出力は6畳程度の部屋であれば十分に暖められます。本体サイズも比較的コンパクトなので、備蓄するにもスペースを取り過ぎないのがメリットです。
石油ストーブ コロナ SL-51
防災推奨レベル | |
使用燃料 | 灯油 |
本体サイズ | 幅460×奥行460×高さ553 mm |
暖房出力 | 5.14kW |
適用畳数 | 木造13畳/コンクリ18畳 |
本体重量 | 9.9kg |
暖房能力の高さなら文句無しの石油ストーブ。これ1台あれば部屋全体を暖めるだけでなく、360度全方向に熱を放出してくれるので周囲にいる人全員が暖を取ることができます。
暖かさに加えてもう一つのメリットが炎の明るさです。白炎燃焼という白い炎が静かにゆらゆらと燃焼しているので、停電時の暗い環境下を灯りとして照らしてくれます。実際に、災害時に避難所となる体育館のような広い施設でも多く使われているのを見かけます。暖房能力を重視したい場合に特におすすめしたい石油ストーブです。
カセットガスストーブ イワタニ デカ暖Ⅱ
防災推奨レベル | |
使用燃料 | カセットガス |
本体サイズ | 幅361×奥行311×高さ364mm |
最大発熱量 | 1.35kW |
適用畳数 | 木造4畳/コンクリ5畳 |
本体重量 | 4.3kg |
カセットガスをセットするだけで使えるカセットガスストーブ。燃焼部は石油ストーブのような反射式になっていることで、前面へ熱を放出します。
カセットガス仕様なので石油ストーブより暖房能力は劣るものの、ガス特有の点火後すぐに暖かくなるのが大きなメリット。カセットガス1本で約2時間30分ほど燃焼させることができます。持ち手が付いているので持ち運びも簡単です。燃焼時間が短いのがデメリットですが、日常的にカセットガスを備蓄している人に特におすすめです。
カセットガスストーブ アラジン SAG-BF02A
防災推奨レベル | |
使用燃料 | カセットガス |
本体サイズ | 幅330×奥行335×高さ386mm |
最大発熱量 | 2.0~0.8kW |
適用畳数 | 木造4畳/コンクリ5畳 |
本体重量 | 5.7kg |
デザインがおしゃれなカセットガスストーブが欲しい人におすすめ。アラジンの有名な石油ストーブであるブルーフレームとコンセプトが類似していますが、燃料はカセットガスです。
コンパクトで丸いデザインが可愛く、アウトドアや日常使いにも人気のストーブ。カラーはレッドやイエローなど数色展開されているので、お好みの色を選べるのも魅力の一つ。停電時の備蓄用としてだけでなく、日常から使いたい人におすすめのおしゃれなストーブです。
アラジンについては下記の記事を参考にしてみてください。
カセットガスファンヒーター イワタニ 風暖
防災推奨レベル | |
使用燃料 | カセットガス |
本体サイズ | 幅319×奥行260×高さ438mm |
最大発熱量 | 2.00kW |
適用畳数 | 木造5畳/コンクリ7畳 |
本体重量 | 4.7kg |
カセットガスを使用するファンヒータータイプ。カセットガスストーブと同様にカセットガスをセットするだけで使用できます。ファンヒーターなのでファンを回して温風を送りますが、外部電源は一切不要。熱発電素子を利用することで燃焼による熱から電気を起こしてファンを回します。
温風を吹き出すのでカセットガスストーブよりも暖房感が強いのが特徴です。出力は二段階で切り替え可能で、連続燃焼時間は標準時で約1時間40分、弱運転時で約2時間30分の継続運転が可能です。
停電時も使える暖房器具で防災対策を!
冬は大雪や暴風による停電が日本のどこかで毎年発生しています。短時間の停電で済めば良いですが、場合によっては数日間全く電気が使えない状況になってしまうこともあります。食べ物は購入すれば入手できますが、電気はそういう訳にはいきません。真冬の極寒のなか、停電で暖房ができないという最悪なケースを避けるためにも、今できるうちに電気不要の暖房器具を準備しておくことをおすすめします。
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